想定の10倍売れた理由は パナソニックのシェーバー「ラムダッシュ パームイン」開発秘話
ボディのふくらみを2mm削った理由
最終的に、従来のシェーバーと体積比で30%減、最初に制作された試作機からも10~20%減のサイズを実現した。小ささや見栄えの良さだけでなく、それ以上に意識したのが、手に持った時の馴染み具合だったという。ひげを剃る際に手先の感覚が変わることから、ボディのふくらみを2mm削ることにこだわった。かなり苦労はしたものの、リニアモーターを制御する基盤を2段に分けておさめる予定だったのを変更して、3段の「まるでミルフィーユのような構造」(山本氏)にして解決した。
その結果、洗面所に置いても電動シェーバーには見えず、空間に溶け込むデザインであるとともに、ひげを剃る刃と手に持つ部分が近いことで、顔をなでるようにしながらシェービングする感覚を実現した新商品が生まれた。
また、上位モデルのES-PV6Aのボディには海洋ミネラル由来の新素材が採用されている。海水を淡水化する際に出る廃棄物のミネラル成分を再利用した、三井化学開発の「NAGORI®」だ。SDGs(持続可能な開発目標)に配慮した新素材だが「家電に採用されるのは初めてだった」(山本氏)。色付きのプラスチック樹脂を練りこんで石目調に仕上げているが「模様をきれいに出すのが非常に難しかった。また、耐久性のテストと試作を何度も繰り返した」。機構の設計と同様に、設計担当者が苦労した点だったという。
しかしそのおかげで、目指す「シェーバーらしからぬシェーバー」が実現した。山本氏によると「従来のシェーバーは男性が持つ象徴的な道具というか、ゴツゴツした、メタリックなイメージがあった。それだけしか選択肢がないのはどうなのだろうと感じ、シンプルかつニュートラルなものづくりがしたかった」。そう考えて、石目調に仕上がる自然由来の素材を探す中で出会ったのが「NAGORI®」だったそうだ。