フードサービスアナリストから見た中食の実態「第4回 消費者心理とニーズを明らかにする」
消費者は習慣的・ついで買い的にスーパーの惣菜を購入している
市場規模拡大が続いていると言われている中食市場。しかし、市場規模以外の客数や食事に利用される回数、利用者層や利用シーンなどの利用実態は一般的に公開されておりません。エヌピーディー・ジャパンが提供する外食・中食市場情報サービス『CREST®』は、1年365日継続して行っている調査で、業態や食シーン、利用層ごとの市場規模、食機会数、客単価動向を分析することができます。この『CREST®』から、中食市場の利用実態をシリーズで紹介しており、今回が最終回となりました。
この連載第1回では、中食の市場規模は4年連続で拡大しているものの、客数にあたる食機会数は、ここ3年伸び悩んでいるということを紹介しました。1人当たりの利用回数・ニーズは増加していますが、人口減少が主な理由です。第2回では、中食利用の業態別コア層を分析しました。
〇コンビニ→コア客層:男性15-59才、会社員。
〇弁当・総菜専門店→コア客層:男性40-59才、会社員、既婚者。
〇スーパー→コア客層:男女40-59才。
第3回では、ターゲット層の食シーンを分析することで、注力する時間帯・商品や、新たな顧客開拓や既存客層強化につながる例をご紹介しました。
今回、第4回目では、消費者の心理・ニーズの分析を紹介します。
『CREST®』では、店舗選択理由や満足度、再利用意向、利用頻度など利用者の心理やニーズに関する項目の分析が可能です。まず、コンビニ、弁当・惣菜専門店で中食利用した人の、店舗選択理由を見てみましょう(図表4-1)。
<図表4-1>中食喫食者の店舗選択理由
出典:エヌピーディー・ジャパン CREST 食機会数
どの業態においても「便利な立地」で選ばれる比率がもっとも高いのですが、業態ごとに比率がかなり違います。コンビニは、便利な立地で選ばれる率が49%とほぼ半数であるのに対し、スーパーは42%、弁当・総菜専門店は、わずか28%です。弁当・惣菜専門店は、「価格が手ごろだから」が26%で2番目に高く、「便利な立地だから」とほとんど同じ比率です。弁当・惣菜専門店は、コンビニ、スーパーと比べると、「食べ物がおいしいから」「食べ物の質がいいから」「お目当ての料理があったから」「好みの味だから、無性に食べたくなったから」の比率が高く、利便性より、価格と商品の味と質で選ばれていることがわかります。
コンビニは価格より便利な立地で選ばれているほか、「他に行くところがなかった」と消極的な理由も高く、立地条件が最も重要であることが分かります。スーパーは、便利な立地の他、価格の手ごろさ、「いつも行くから」という習慣的・ついで買い的な理由が多いことが特徴的です。コンビニと比べると、「食べ物の種類の豊富だから」も高くなっています。
“勘”に頼らず「当てるべきして当てる」!
次に、満足度を見てみましょう(図表4-2)。『CREST®』では、外食・中食で利用した店舗について、サービス、クリンリネス、接客、価格感、商品などの17項目について満足度を5段階評価で調査しています。そのうち、「全体的な満足度」「値ごろ感に対する満足度」「食べ物の味に対する満足度」「スピーディーで手際のよいサービスに対する満足度」の4項目について、業態ごとに比較してみます。
<図表4-2>中食喫食者の満足度
出典:エヌピーディー・ジャパン CREST 食機会数
コンビニは、スピーディーなサービスについて満足度が高めですが、値ごろ感の満足度が相対的に低く、全体的な満足度も弁当・総菜専門店より低い57%となっています。弁当・総菜専門店は、値ごろ感とスピーディーなサービスに対する満足度が高く、全体的な満足度も、最も高い62%となっています。スーパーは、食べ物の味とスピーディーなサービスに対する満足度が低く、ここが課題と言えるでしょう。また、店舗選択時に価格の手ごろさで選ばれているものの、値ごろ感(コストパフォーマンス)としては、満足度が弁当・総菜専門店より低く、安かろう、悪かろうという印象を消費者が持っている可能性があります。全体満足度も54%と低くなっています。
ここまで見てくると、弁当・総菜専門店は立地より味や商品が評価され満足度も高いので、うまくいっているように見えるのですが、利用頻度に問題がありました。図表4-3を見てみましょう。過去1カ月の利用回数を比較してみると、弁当・惣菜専門店は、「月に3回以下」の比率が59%を占め、利用頻度が低い業態であることが分かります。味や商品、価格、サービスでいくら満足しても、頻繁につかってもらえていないということです。これには、やはり、立地条件が影響していると考えられます。利便性が高くないと、頻度が低くなってしまうのです。弁当・惣菜専門店は、リピーターを増やす工夫、施策を打つ必要があるでしょう。
<図表4-3>中食喫食者の利用頻度
出典:エヌピーディー・ジャパン CREST 食機会数
コンビニは、バランスがよく、利用頻度が高いヘビーユーザーも多いのですが、他に選択肢がないからなど“しょうがなく”利用している場合も多く、食べ物の質やおいしさ、“目当てになる”ような商品の開発が課題と言えます。
これらの消費者のニーズ・満足度はさらにターゲット層に絞って分析していくことで、もっとも注力すべき課題が見えてくるでしょう。
4回にわたり、中食市場で、データを活用してどのように課題をあぶり出し、施策・戦略を考えていくのかという例の一端をご紹介してきました。昔ながらの“勘”と自社の売上実績に頼るマーケティングの時代は終わりました。より的を絞り、資源を集中して施策を打つことで、従来の「たまたま当たった」から「当たるべきして当てる」というマーケティングが、今、必要とされています。また、自社のPOS分析だけでは、市場全体でのビジネスチャンスが見えてこないことも多いです。市場代表性を持ち、包括的かつ確度の高いデータを合わせて、マーケティングに活用していくことが、将来のチャンスにいち早く気が付く近道となるでしょう。
プロフィール
エヌピーディー・ジャパン株式会社
NPDはアメリカをはじめ世界23ヶ国で消費者パネル調査および小売店パネル調査を展開する調査・市場規模測定のリーディング企業。エヌピーディー・ジャパンは外食・中食(業務用食品)市場、 スポーツシューズ・アパレル市場に関する最新動向やインサイトを提供している。
CREST®
外食・中食市場において 「いつ、誰が、どこで、何を、どのように食べ、どの程度満足したか」など消費者のあらゆる喫食動態データを1年365日、直接消費者から収集し、年間13万を超えるサンプル数を元に調査分析できる情報サービス。外食市場規模、中食市場規模、客数を業態、セグメント別に把握可能。
URL: http://www.npdjapan.com/service/food.html
エヌピーディー・ジャパン株式会社
TEL: 03-5798-7663
FAX: 03-5798-7665
Email: npdjapan.info@npd.com
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