「PR Analyzer」で見える化した「ジェンダーレス」はどのくらい“バズって”いる?
近年、ファッション業界やコスメ業界を中心に注目を集めるキーワードの一つが「ジェンダーレス」だ。その「ジェンダーレス」が、実際にはどのくらい記事として取り上げられていて、どれくらい人々の間に波及しているのだろうか? ビルコム(東京都港区)が提供するクラウド型PR「PR Analyzer」を用いて、「ジェンダーレス」のPR効果をデータから「見える化」してみた。
この「ジェンダーレス」について、Web記事の掲載数やSNSでの波及効果などの「見える化」を試みたのは、ビルコム株式会社 PR Tech局の髙橋憲一郎氏だ。
記事のクリッピング・集計・分析が1チャネルで可能な「PR Analyzer」
まずは、「ジェンダーレス」という言葉の意味を確認しておこう。
◆ジェンダーレス(Genderless)
社会的、文化的な「性」=「ジェンダー」(Gender)に「レス」(-less)が付いた言葉で、性差のない、またはなくそうとする考え方のこと。
※似た言葉に「ジェンダーフリー」(Gender Free)があるが、これは「性差の違いにとらわれず、個人が自由に行動する」という意味で「ジェンダーレス」とは異なる。
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「SDGs」(持続可能な開発目標)の、2030年までに達成すべき17ゴールの中にも「ジェンダー平等の実現」が含まれており、「ジェンダーレス」は世間の注目を集めるキーワードの一つだ。とりわけ若年層の関心が高い傾向があり、2020年に「東京ガールズコレクション」の公式メディアが実施したアンケートでも、SGDsの17目標の中で「ジェンダー平等を実現しよう」が最も高い関心を集めた。
「国内でも、中学校・高等学校で制服に性差をなくしたり、ユニセックスなデザインの制服を採用したりするなど、身近な問題としてとらえやすくなっています。そこで、この『ジェンダーレス』という言葉に注目し、メディアでどのくらい取り上げられているかを可視化してみようと考えました」(髙橋氏)
同社が提供する「PR Analyzer」は、TV・新聞・雑誌のマスメディアに加え、WebやSNSも網羅して記事のクリッピングから集計、比較、分析までを一括管理、可視化できるクラウド型PR効果測定ツールで、150社以上が導入している。この「PR Analyzer」を通じて、「ジェンダーレス」のメディアでの掲載状況を集計・分析してみた。
「ジェンダーレス」の掲載数は緩やかに増加
まず、「ジェンダーレス」に関するWeb記事データの掲載数から見てみよう。
1年間(2021年3月~2022年2月)のWeb記事における「ジェンダーレス」関連記事の掲載数の推移を見てみると、緩やかな増加傾向にある。とりわけ、2021年9月以降は月間3,300記事前後の高い水準で推移しており、同年3月~8月に比べて1.5倍に増加している。Web記事においても、「ジェンダーレス」は話題性の高いワードであることがうかがえる。
次に、「ジェンダーレス」を、さまざまなテーマとの関連で掲載数を分析してみるとどうなるか? ここでは、次の7テーマをピックアップし、「ジェンダーレス」との関連を分析してみた。「PR Analyzer」では、こういったタグ付けによる記事の分類とデータ集計、及び分析も可能だ。
【対象テーマ】
・制服 ・ヘアスタイル ・メイク ・スキンケア ・アクセサリー・ドレス ・アパレル
テーマごとに、1年間(2021年3月~2022年2月)のWeb記事掲載数を比較すると、最も多いのが「アクセサリー」で、「メイク」がそれに続く結果となった。「アパレル」「スキンケア」も高い数字を示している。逆に、「制服」「ヘアスタイル」は相対的に少ない結果となった。
では、これらのテーマごとに、「ジェンダーレス」は実際にどのように取り上げられているのだろうか? 代表的な記事を紹介しよう。
●「ジェンダーレス×アクセサリー」の記事例
「“ジェンダーレス”ジュエリーに注目!「自分らしいお洒落」の楽しみ方【マリハ】」(2022年1月21日/Yahoo!ニュース)
ジュエリーブランド「MARIHA」(マリハ)の新作ジュエリーについて紹介。ジェンダーレスなスタイルで、パートナーとのシェアも楽しめるアイテムとして紹介している。
●「ジェンダーレス×メイク」の記事例
「ブームでは終わらない男性の化粧『がっつちアイシャドウ』『リモート映え』コロナ禍の変化」(2021年9月5日/AERA.dot)
コロナ禍に関連して、男性のメイク需要の広がりについて取り上げられた記事。リモートワークに関連してコスメの需要が高まっているなど、コロナ禍の時流と絡めた内容で記事化されている。
●「ジェンダーレス×ドレス」の記事例
「『アンテプリマ』がジェンダーフリーなウエディングドレスを発表」(2021年12月14日/WWD)
ファッションブランド「アンテプリマ」のジェンダーフリーなウエディングドレスを取り上げた記事。フォーマルな場でのジェンダーレスなスタイルの提案が、新鮮な話題づくりにつながっている。
●「ジェンダーレス×制服」の記事例
「ユニクロの既製服を「制服」に 値段抑え手入れもラク…高校生と保護者の反応は?埼玉で全国初導入へ」(2022年3月4日/FNNプライムオンライン)
「ユニクロ」の製品を制服として採用することで費用負担を抑え、かつジェンダーレスな選択肢を可能にしたという、埼玉県さいたま市立中学校の事例が取り上げている。前年にも同様に多くの学校でジェンダーレス制服の導入が記事化されていたが、今年も引き続き記事化の動きがみられる。
SNSの波及効果が最も高いテーマは「制服」
ここまではWeb記事の掲載数という「量」に着目した分析結果を見てきたが、今度は一本の記事がどれだけSNSなどで波及したか、という「インパクト」に目を向けてみよう。
「PR Analyzer」では、記事のSNSでの波及効果を表す独自の指標「SNS波及数」を計測することができる。「ジェンダーレス」の関連記事のうち、その「SNS波及数」の上位10記事を抽出してみたところ、そのうち実に5つの記事が「制服」関連のテーマとなった。
「先ほどのテーマ別の記事数では『制服』関連のテーマは相対的に少ない結果でしたが、『SNS波及』という別の視点で見ると、一記事あたりの波及効果が高いことがわかりました。世間一般的にポピュラーなテーマであることに加え、教育の現場で「ジェンダーレス」の具体的な取り組みが進んでいることも、関心の高さを後押ししているものと考えられます」(髙橋氏)
さらに、「ジェンダーレス」の「SNS波及数」上位100記事タイトルを「UserLocal」のテキストAIマイニングツールを活用して解析してみた。「LGBTQ」を中心に「市立」「制服」「生徒」など学校関連のワードが目立っていることが視覚的にわかる。その中でも「制服」がより中心に近い位置にあり、インパクトの大きさをうかがわせる。
パブリシティ効果の向上施策にも活用
以上の分析結果を、改めて髙橋氏に総括してもらった。
「ジェンダーレスに関連する報道量は増加傾向で推移しており、当面はこの傾向は続くと予測できます」と髙橋氏は述べた上で、「ジェンダーレス」というキーワードがあぶり出した記事掲載・SNS波及の傾向を「男性向け」「世界初・日本初」「制服」「シェア」という4つのポイントに整理して解説してくれた。
「ジェンダーレス」のキーワード分析によって浮かび上がった傾向
男性向け |
男性向けの商品やアイテムのほうが、比較的記事化されやすい傾向にある |
世界初・日本初 |
「世界初・日本初」を訴求できるアイテムは、記事掲載の見込みが高まる |
制服 |
社会の多くの層に問題提起できる点と、学校教育の一環としてジェンダーレスに取り組んでいる点でも関心が高いと考えられる |
シェア |
ジェンダーレスなアイテムを、パートナーとシェアするコミュニケーションが、今後は一般化する可能性がある |
このように、あるキーワードがWeb記事においてどう語られ、どう人々に波及しているのかを、的確なデータをもとに導いてくれる「PR Analyzer」。キーワードごとのインパクトを定量的に把握することで、自社製品のパブリシティ効果をより高めることは可能だ。自社プレスリリースの定量評価にも役立てることができそうだ。
PR Analyzer公式サイト
https://www.pranalyzer. /