富士ソフト/AzureのAIを流通、製造向けに提案
正確な需要予測を実現し、機会損失、廃棄ロス減少に効果
「AI・IoT」が、今のコンピューティング市場のキーワードになってきた。併せて言えばクラウドやビッグデータは、AI・IoTのベースとして当たり前の要素と考えるべきだろう。ただ一般的には、「AI・IoTで何ができるのか」「AI・IoTで業務はどう変わるのか」と期待があるものの、業務への応用やコストなどで実現に二の足を踏んでいるのが実情だ。富士ソフトは、マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」のAIを活用した「需要予測システム」を流通小売業や製造業向けに提案している。
属人的な需要予測からの脱却が必要
流通小売業にとって正確な需要予測は非常に有効だ。適切な需要予測データがあれば、適正在庫を確保しつつ、それを売り切ることができ、不良在庫になりかかっている商品のプライスダウンなどをせずに予定した収益を上げることが可能だ。
従来、そうした需要予測は高度に熟練したスタッフが、経験とカンで決めるというのが一般的なスタイル。過去の販売実績や市況、天候などさまざまな条件を織り込んで需要予測を絞り出す、という感覚に近いだろう。最近では消費者嗜好の多様化ばかりでなく、SNSでの口コミに売れ筋が左右されるという現象も起きるだけに需要予測を立てるのは非常に難しくなっている。そうした突発的な事象まで含めて、正確な需要予測を導き出すのは、もはや経験とカンにばかり頼っていられない。
また属人的な作業による需要予測は、そのマーケッターがいなくなれば、それで終わる可能性もある。属人的であるが故に、継承していくことが非常に難しい面があるからだ。
AIS-CRMをビジョンに掲げAI導入支援を展開
コンピューター化が進むなかで、自動的に需要予測を弾き出すソフトも開発されている。店舗から得られるPOSデータはもとより、顧客管理システムから吸い上げるデータ、日次や月次の売上データの推移と天候などのデータを投入して、精度の高い需要予測ができるようになり、さらにデータが蓄積してくることで、徐々に正確性も高まってくる。
POSデータだけでなく、膨大なデータを取り込んで一定のアルゴリズムを用いて定量的に計算するには限界がある。そこで注目されているのがAIだ。つまり人工知能を使った需要予測だ。機械学習や深層学習を含めて、膨大なデータをデータモデルに沿って処理し適切な答えを導き出してくれるのがAIではあるが、そのデータを整備することがまず重要になる。
コンピューターベンダーやソフトベンダー、SIerなどがAIによるビッグデータ解析などのソリューションを提供している。富士ソフトもその1社。
富士ソフトはICTビジョンに「AIS-CRM(アイスクリーム)」を掲げる。それはAIとIoT、Securityに加えてCloud、Robot、MobileとAuto-MotiveのMを組み合わせたフレーズだ。それが付加価値向上に向けた富士ソフトの新技術への挑戦というわけだ。
マイクロソフトと連携によりAzureを活用したAIの検証が容易に
MS事業部
AIサービス部
部長
高野 祐一氏 富士ソフト
MS事業部
事業企画部部長
片白 健太氏
実際にシステムユーザーからは、「AI で何が変わるのか、という声もあるが、AIの話を積極的に聞きたいという声もある。これまでわれわれは情報システム担当者と主に会話してきたが、そうした声は現場サイドでより強いと感じている」と片白氏は話す。そこで多く尋ねられるのが、「AI は高いのだろう?」ということ。さまざまなベンダーがAIソリューションを展開しているが、数億円や安くても数千万円というケースがないわけではない。しかし「PoC(概念実証)では、最小で100万円程度から始めたケースもある」(高野氏)という。もちろんデータ量や分析項目が増えれば必要なコストは増大する。
「重要なのはお客様が何を課題に持っているか、どのようなデータが使われずに埋もれているのか」だと片白氏は話す。「それによりPoCで何から始めて効果を試すのかがはっきりする」(片白氏)というわけだ。
「AI・IoT」という単語と期待値が先行しているイメージが強いが、すでに本番用に導入・活用しているケースや、PoCに着手している企業もある。「実際にPoCの依頼は増えており、2018年はそういう点では、AIが本格的にスタートするとみている」と高野氏は話している。