転換点迎えたセブン&アイ、新社長が示した成長戦略とは

北野 裕子 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

新社長が語った成長戦略の5つの柱とは

セブン&アイの成長戦略について説明するデイカス氏(6日、東京都内)

 新たに社長に就任することが決まった、セブン&アイの筆頭独立社外取締役を務めるデイカス氏。これまではACTの買収提案について検討する特別委員会のメンバーとして携わってきた。今後は執行側へ立場を転換し、難局でのかじ取りを迫られることになる。

 デイカス氏は会見で「最近のわれわれは勢いを少し失っている。市場シェアを一部失った事実を謙虚に受け止めなければならない」と話し、「ビジネスを元の軌道に戻す必要がある」とした。  

 そこで成長戦略の5つの柱に掲げたのが、①社長交代により戦略の実行スピードを加速、②北米のセブンイレブン事業を担う会社の26年度下半期までのIPO、③30年度までに総額2兆円を自己株式取得のかたちで株主に還元、④ヨークHDの一部売却、セブン銀行の非連結化へ保有株引き下げ⑤デリバリー事業の強化やМ&A(合併・買収)によるCVS事業の成長施策-の5つだ。

 このうち、②については北米のセブンイレブン事業を担う7-Eleven, Inc.(以下:SEI)を、26年度下半期までに米国でIPOするとしている。デイカス氏は「SEIはすでに米国最大のチェーンで、高い認知度と業界随一のデジタル戦略を有する。IPOにより、柔軟な財務戦略で成長を加速させる」と語った。なお、セブン&アイは上場後も株式の過半数は保持する方針としている。この②と④で得た資金を用いて強化するのが③で挙げた自己株買いだ。30年度までに総額2兆円の自社株式取得を行い、累進配当を充実させるなど株主への還元施策を大幅に強化していくという。

 セブン&アイは、こうした成長戦略を中心にコンビニエンスストア事業の強化を図っていく。ACTの買収提案については、井阪社長、デイカス氏ともに「関係者と協議を続ける」と述べるにとどめた。

会見後には新たな動きも

 セブン&アイは10日、株主へ向けて送った、ACTを含めた買収提案者との協議状況などを記載した公開レターを公表した。公開レターでは、セブン&アイとACTが統合することは米国の独占禁止法上課題があることから、ACTの買収提案を検討するうえで前提条件を提案してきたと説明。その条件のうち、ACTが自社の一部店舗について、売却先の買い手候補の選定を始めたと明らかにした。

 ACT13日に日本で記者会見を予定しており、どのような対応を示すか注目される。

 

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記事執筆者

北野 裕子 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

兵庫県出身。新聞社を経てダイヤモンド・リテイルメディアに入社し、ダイヤモンド・チェーンストア編集部に所属。

趣味は国内の海や湖を巡り、風光明媚な場所を探すこと。おすすめのスポットは滋賀県の余呉湖、山口県の角島大橋。

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