米EV の総数は330万台、裕福なEVオーナーたちのお気に入りの小売店は?
米国では現在、330万台以上の電気自動車(EV)が走っている。要件さえ満たせば連邦政府から最大7500ドル(約115万円)の購入補助金が受けられることから、裕福層を中心にオーナーが徐々に増えていくと予想される。一方、フル充電には通常30分以上かかるため、EV充電ステーションを併設する小売チェーンにとっては裕福な消費者の店舗滞在時間を増やし、より多くお金を落としてもらうことが期待できる。対応の現状をまとめた。
コストコでは充電料金が割引
米国最大の会員制倉庫型小売チェーンであるコストコ・ホールセール(Costco Wholesale)は、一部店舗にガソリンスタンドやタイヤ交換施設を併設して売上を伸ばすなど、従来から自動車関連の事業に熱心である。そのコストコが、EV普及率の高いカリフォルニアなどを中心に、「EVのディスカウント販売」「家庭用EV充電器の割引販売」「おトクなEV充電」を包括的なセットで展開して注目を集めている。
米経済専門局CNBCが報じるところによると、同社は米自動車大手ゼネラルモーターズ(GM)と提携して人気EVモデルを数千ドルの割引で提供するほか、充電ステーションを併設した店舗ではディスカウント価格にて会員が充電をできるようにした。まだ数は限られるものの、便利な急速充電を提供する店舗もある。コストコの広報担当者によれば、会員からの強い要望があったためという。
コストコのガソリンスタンドの給油価格の安さは有名だが、EV充電も魅力的な価格に設定し、潜在顧客を掘り起こしている。さらに、全米に高品質の充電ネットワークを展開するEV大手のテスラ(Tesla)や充電ステーション大手のエレクトリファイ・アメリカ(Electrify America)と提携し、これら企業の充電施設で会員が充電価格の4%引きサービスを受けられるようにした。
米調査企業ニューメレーター(Numerator)は、多くのコストコ会員が都市部あるいは郊外に住み、その58%が42~59歳とぜいたく品に対する可処分所得の多い年齢層だと明らかにしている。また、会員の35%が年収12万5000ドル(約1850万円)以上の裕福層で、米小売業界の平均顧客年収より25%も高い。そのため、EV販売から充電までを一貫して手掛ける合理性があるわけだ。
米小売では、おそらくコストコの取り組みが最も総合的かつ評判のよいものだろう。一方、競合の世界最大小売チェーンであるウォルマート(Walmart)は全米で150店舗を「未来型」に改装し、EV充電ステーションを併設する予定である。インフレの高止まりでより多くの裕福層顧客が同社店舗を利用するようになっており、それを念頭に置いた施策だ。