コロナで変わった農作物調達、「バーティカルファーミング」「ハイパーローカル」とは何か?
従来のような広大な農地ではなく、都市部の高層ビルの屋上や食品小売店の店内など、限られたスペースで農産物の栽培を行うバーティカルファーミング(垂直農法)。環境への配慮や生産効率の高さといった視点で注目を集めていたが、コロナ禍を経て、安定供給・調達やローカライズといった切り口で注目度はさらに上昇。バーティカルファーム企業と提携したり、彼らに資本を投じたりする小売業が次々に誕生している。
コロナ禍で見方変わったバーティカルファーミング
コロナ禍を経て、米国食品小売業界におけるバーティカルファーミングの位置づけが変わった。
バーティカルファーミングで生産する農作物の種類は今のところ主に葉物野菜である。コロナ感染拡大以前、バーティカルファーミングは人口密集地の近くで生産されフードマイレージ(輸送距離)が短いうえに少ない水の量で生産できるエコロジーな側面や、殺虫剤を使わないで生産する点、あるいは従来農法と同じ生産量を小さな面積で生産できる効率性で注目された。バーティカルファーム企業のフィフス・シーズン(Fifth Season)によれば、水の使用量は従来農法の5%、使用する農地面積は3%で済むという。
ところが、コロナ発生以降、これらメリットに加えて、安定的に調達できる点に、より注目が集まるようになった。コロナ発生当初、サプライチェーンが従来どおりに機能せず、商品の供給が不安定になったことがそのきっかけだった。
一方で、生活者の心理や消費行動にも変化が表れた。コロナ禍で、家庭内で食事をする機会が増加、それに伴い生鮮食品の販売額が拡大した。ニールセンIQによると、2021年5月29日までの52週間の野菜の販売額は対前年同期と比較して6.8%、果物は5.8%増加している。なかでも袋詰めカット野菜の伸びは顕著で、同10.7%増と大きく伸びた。
小売企業は自社の商品調達の事情だけでなく、こうした消費者ニーズの変化をとらえるうえでも、バーティカルファーミングに強い関心を寄せるようになった。20年下半期以降、大手スーパーマーケット(SM)チェーンを中心に、最新技術を駆使して生産環境をコントロールするバーティカルファーム企業との提携のニュースが相次いでいる。
店内に栽培機能を有するSMも
SMがバーティカルファームで生産された農産物を導入する方法は大きく分けて2種類ある。1つは、
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