2024年の日本の小売業売上高ランキング1000社の総売上高は、対前年比4.3%増の81兆9948億円と2年連続で増加し、コロナ前2020年の約79兆円を上回り、過去最高を更新した。インフレを背景とした節約志向の高まり、各種コストの増加などのマイナス要因はあったものの、経済が正常化に向かったことで多くの企業が業績を回復させた格好だ。
上位の顔ぶれ変わらずも
成長性で“格差”くっきり
ランキング上位の顔ぶれについて、23年はファーストリテイリング(山口県)がローソン(東京都)を抜いて3位に浮上するなどのサプライズがあったが、24年はトップ10社の顔ぶれに変化はなく、順位も変わらなかった。1位はセブン–イレブン・ジャパン(東京都)で、23年度のチェーン全店売上高は5兆3452億円と2位ファミリーマート(東京都)に2兆2000億円以上の差をつけている。2位ファミリーマートも売上高を着実に伸ばしており、2023年度決算のチェーン全店売上高は3兆円を突破した。
ただ“成長率”でみると顕著な違いがみられる。10社中9社が増収を果たしたなかで、2ケタ増収を果たしたのは2社。3位ファーストリテイリングはトップ10社の中で最も高い増収率で、23年8月期決算における売上収益は同20.2%増の2兆7665億円と、4位ローソンとの差を3000億円以上に広げている。また10位のコスモス薬品(福岡県)は24年5月期16.6%の増収をはたし、9位との差を縮めた。
トップ10で唯一減収になったのは?
家電量販店のヤマダホールディングス(群馬県)はトップ10唯一の減収で、24年3月期は同0.5%減となり元気がない。また、増収組のなかで首位セブン–イレブン・ジャパンと2位ファミリーマートはともにもっとも低い増収率であったことにも触れておきたい。2位ファミリーマートと3位ファーストリテイリングの差は約3000億円にまで縮んでいる。
業態別の総売上高を見ていくと、主要10業態では、総合スーパー(GMS)、百貨店、家電量販店をのぞいた7業態が増収となっている。
全業態で最も多くの企業がランクインしたのが食品スーパー(SM)だ。ランクイン企業数は、前年までSMに区分していた「業務スーパー」のフランチャイズ(FC)チェーンをディスカウントストア(DS)へと移管した影響で297社と前年から17社減となったものの、総売上高は19兆445億円と前年から3.2%増となった。
再編目白押しのSM
増収企業は7割も……
297社中増収だったのは227社。売上高300億円以下の中小チェーンで減収が目立ったものの、インフレで価格転嫁が比較的に順調に進んだこともあって、全体では売上高を伸ばした企業が多かった。ただし当期純利益ベースでは減益する企業が相次いだ。
大手による再編が加速するSMでは、この先もランキングの変動要因が目白押しだ。
西友(東京都)が北海道と九州の店舗事業をイオン北海道(北海道)、イズミ(広島県)にそれぞれ売却することを発表。快進撃を続けるロピア(神奈川県)は24年8月~25年3月までに、イトーヨーカ堂(東京都)から北海道、青森県、岩手県、新潟県、長野県の計7店舗を承継する。
もっとも落ち込んだ業態は
インバウンドに沸く百貨店!?
業態別の総売上高が最も落ち込んだのは、意外にも百貨店だ。インバウンドに沸き、単店としては国内首位の伊勢丹新宿店の24年3月期売上高は3758億円(14.7%増)に達し、2位の阪急うめだ本店は3140億円、20.3%増と都心の大型店は絶好調であるにもかかわらず、なぜ業態としての売上は減少したのか?
1000社以内にランクインしたのは前年から2社減の52社で、総売上高は対前年比1.6%減の2兆1192億円だった。確かに人流回復、インバウンド消費の活発化などにより、都市部で店舗展開する上位企業の業績は好調に推移したものの、地方を拠点とする中小百貨店は前年に続いて減収が目立ち、最終赤字となっている企業も少なくないからだ。「インバウンドに沸き、過去最高売上の百貨店」というイメージは、必ずしも百貨店業態全体を映し出しているわけではないのである。
このように小売業界を取り巻く環境は変化している。日本の小売業1000社ランキングをつぶさにみると、その変化の諸相ははっきり見えてくるだろう。
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