縮小マーケットで勝ち残るのはどの企業? メガネ専門店チェーンの動向を解説
1970年代頃まで、メガネはいわゆる「街の眼鏡屋」でつくってもらうのが一般的だったが、組織流通化の波がメガネ専門店業界にも押し寄せ、あっという間に大手チェーンに席巻されてしまった。ただ、市場のメインプレーヤーとなったメガネ専門店チェーンも決して安閑としてはいられない。今回は、メガネ小売のマーケット環境と大手チェーン各社の動向を考察してみたい。
マーケットは緩やかに縮小
低価格なメガネを提供する専門店チェーンの台頭により、直近20年間のスパンでみると大きく規模を縮小させたメガネ市場。矢野経済研究所によると、2020年の国内アイウエア小売の市場規模は4475円と、近年は縮小ペースが緩やかになっているものの、ダウントレンドであることには変わりはない。
メガネの数が売れなくなったかといえば、そういうわけではなさそうだ。マーケット縮小の元凶は「メガネの低価格化」だ。個人的な体験になるが、一昔前は一般的なメガネ一式をつくるには3万円前後かかるケースがほとんどだった。現在は、1万円を切る値段でメガネとフレームを購入できる。
メガネフレームの価格帯別売上比率は、約80%が1万円以下と言われ、3万円以上のいわゆる高級品は3%程度だとされている。低価格化は消費者にとっては嬉しいが、販売店にとっては厳しいものがある。
メガネ専門店売上高ランキング!
メガネ専門店チェーンの売上高ランキングでは、首位は非上場のメガネトップ(静岡県)で2022年3月期の売上高は821億円。2位は「JINS」でおなじみのジンズホールディングス(東京都)で669億円(22年8月期実績)と続く。
この2社を2トップとし、パリミキホールディングス(東京都)、ゾフ(東京都:非上場)、ビジョナリーホールディングス(東京都)、愛眼(大阪府)と売上高500億円以下の中堅チェーンが後を追うのが、現在のメガネ小売市場の構図だ。
低価格路線でメガネ業界を席巻したのが、ジンズHDだ。同社が考案したのがいわゆる「3プライス方式」で、5000円・8000円・1万2000円と主に3つの価格帯で、メガネとフレーム(検査を含む)を一式で提供する。
ジンズの価格競争力は、SPA(製造小売業)モデルに支えられている。従来のメガネ流通では常識だった問屋や特約店をスキップするだけでなく、企画・設計・量産化・販売までのサプライチェーン全体を自社内に取り込むことで低価格を実現している(ただし生産は、中国を中心とした海外サプライヤーに委託)。
SPAのメリットは低コスト化だけではない。企画・設計の取り込みは、顧客ニーズにマッチした商品の開発にも寄与している。ジンズHDではブルーライトをカット機能付きのパソコン用メガネをはじめとした機能性アイウエアも世に送り出してきたことでも有名だ。「空気のようなかけ心地」がキャッチコピーの「Airframe」シリーズもジンズHDの代表作だ。
こうした戦略により消費者の支持を集め、ジンズHDの業績はコロナ禍前まで、ほぼ毎年2ケタ成長を続けてきた。コロナ直後の2020年8月期こそマイナスだったものの、翌期にはV字回復し、過去最高売上を更新している。