米ビューティーケア用品市場で売上全体の41%がオンラインにシフトしたワケ

岩田 太郎(在米ジャーナリスト)

消費者ニーズの多様化と差別化競争の加速

 米市場調査企業サーカナ(Circana)は、24年の米高級ビューティ用品市場について、4年連続で成長し、対前年比7%増の339億ドル(約4兆8900億円)と、前述のスタティスタの推計を上回る規模であったと報告している。一般ビューティ用品市場の成長率は3%にとどまっていることからも、高級品セグメントがもっとも有望であることがうかがえる。とくに高級香水が同12%増となり、パルファムは同43%増、オードパルファムが同14%増となった。

 これらの結果から見えてくることは、オンラインプラットフォームが高級品セグメントでどれだけ消費者に浸透できるかが今後重要になっていくということだ。

2024年の米高級ビューティ用品市場においては、4年連続の成長が記録され、前年比7%増の339億ドル(約4兆8900億円)となった。(Circana)
2024年の米高級ビューティ用品市場においては、4年連続の成長が記録され、前年比7%増の339億ドル(約4兆8900億円)となった。(引用元:Circana

 一方、一般向けセグメントもオンライン販売が好調である。インフルエンサーによるデジタルマーケティング戦略を駆使し、Z世代(00年前後出生)のあいだで支持を集めて急成長した米e.l.f.ビューティ(e.l.f. Beauty)は、アマゾンの商品検索や同社の「ディスカバリー」機能の活用で売上を伸ばしたとされる。また、アーティスティックなメイクアップ技術で話題となった米ローラ・メルシエ(Laura Mercier)も、アマゾンへの出品を開始した。

オムニチャネル化で消費者のニーズに応える

 こうした中、Z世代に人気のTikTok Shopは、インフルエンサーマーケティングを武器に米オンライン美容用品市場で8位につけるまでに成長している。ニールセンIQは、米消費者の8人に1人がTikTok Shopで商品を購入した経験があると分析しており、ビューティ業界でもアマゾンに次ぐ重要なプラットフォームとなりつつある。

 本来、化粧品は肌の色や好みに個人差があるため、店頭で実際に試供品を試してから購入する傾向が強かった。この点は依然として変わらないものの、「失敗のリスク」を受け入れてオンラインで直接購入する消費者も増えている。小売側は、オムニチャネルでの商品提供を通じて、こうしたニーズに応えていく必要がある。

 実店舗が強い米ビューティ専門チェーンのアルタビューティ(Ulta Beauty)は、自社マーケットプレイスを25年秋に開設予定であり、米小売最大手のウォルマート(Walmart)も「買い求めやすい高級化粧品(affordable luxuries)」を実店舗で提供するなど、各社が工夫をこらしている。ウォルマートは40店舗でトレンディーな商品を展開する「ビューティーバー(Beauty Bars)」も立ち上げた。

 米ビューティーケアおよびパーソナルケア用品市場では、オムニチャネルの強化とともに、今後もオンライン販売の割合がさらに拡大していくとみられる。

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