「NRF2022」現地取材報告&米国小売業のデジタル変革最前線

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「NRF2022」現地取材報告&米国小売業のデジタル変革最前線 ウォルマート、アマゾンの最新戦略に見る小売業の未来
大島 誠 氏

【基調講演】

パナソニック コネクト株式会社
エグセクティブ インダストリーストラテジスト
大島 誠 氏

 

コロナ禍を経てピックアップと宅配が定着

米国の小売市場は、物価上昇や人手不足、サプライチェーンの課題がある中、順調に拡大している。21年の米国小売市場は4兆5830億ドルに達した。30年前、米国小売市場は日本の小売市場と大きな差がなかったが、この30年間、日本市場がほぼ横ばいで推移しているのに対し米国市場は右肩上がりで成長した。

2021年の米国小売市場

こうした中で開催された「NRF2022」の会場を視察して、キーワードはリーダシップ、メタバース、サステナビリティ、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンのDEI、そして人材だと感じた。拡大する米国の小売市場の変化という点では、コロナ禍もありウォルマートのピックアップスタイルも接触が避けられないインストア、カウンターといった形からカーブサイドに移行が進んでいるようだ。19年には利用客の25%がピックアップ・配達を利用していたが、パンデミック後の21年には54%が利用するようになった。米国のグロサリー売上のうちピックアップと配送は19年8月の段階では2%だったが、パンデミックの始まった頃にはピックアップ4%、配達2.5%に増加して、その後は8~9%程度で推移している。

グロッサリーのPickup/Delivery別売上の推移例

宅配もドローンの運用にも人手が必要

ウォルマートのラスト“ワン”マイルDelivery戦略

ピックアップで、消費者からの評価が高いのがウォルマート、ターゲット、ベストバイ。配達で評価が良いのがアマゾンで、ウォルマート、ターゲットの評価は高くない。ウォルマートとしてはピックアップはほぼ完成しており、今後は配達の拡大と改革に乗り出している。21年11月には立て続けにイノベーションを発表した。ひとつは無人トラックによる拠点間の配送、そして無人運転車による宅配、2つのタイプのドローンによる配達である。

「インホーム」は社員が配達するがドア前ではなくて、住宅のキッチンや冷蔵庫の中に配達するサービス。アーカンソー州やフロリダ州で実証実験が始まっている。ただ有料会員制で年間148ドルの料金が必要。セキュリティについては個別訪問する社員は毎回同じ人。研修を受けテストにパスすることを課している。社員はウェアラブルカメラを装着し、家に入るところから撮影することで信頼性を高めている。このサービスは22年に全米3000万世帯に拡大するとしている。

新しい試みがドローン。21年11月から商用化に向けた実験を開始した。通常のドローンを使う配達と、飛行機タイプの無人機で配達する方法がある。通常のドローンは店舗から半径1.6㎞以内、無人機は半径80㎞以内。配達できる重さは4ポンド以内で、専用のカタログから商品を選択する。合計が4ポンドを超えると注文ができない仕組みとなっている。

ベントンビル近郊の3店舗でスタート

しかし「インホーム」は“人”がカギになるし、ドローンを運用をするのも“人”である。実証実験の段階ではドローンを飛ばした先に、スタッフが先回りして配達が確実にできているか確認している。つまり“人”が関わらなければ法規制もあり難しい面がある。

ダークストア化と技術検証の場と化したアマゾンフレッシュ

もうひとつの話題は、生鮮商品も扱うアマゾンフレッシュ。20年2月にJWO(ジャスト・ウォーク・アウト)方式のアマゾンゴーグロサリーを開店し、9月には2号店を開設した。もともとアマゾンフレッシュはグロサリーの宅配を開始したときのネーミングで、その後ピックアップサービスも開始。そして20年8月にアマゾンフレッシュの実店舗を開店したのを機にアマゾンゴーグロサリーもアマゾンフレッシュに名前を変えた。JWO方式が7店舗あり、もともとのダッシュカートを使った店舗が16店舗ある。22年後半には44店舗以上になるとみている。

ところが、アマゾンフレッシュは開店後しばらくすると客足が減少しているように見える。人がいてもそれは多くの場合、アマゾン社員のピッキングを担当するパーソナルショッパーだ。来店よりも配達が中心のダークストア化あるいは技術検証の場と化しているように思える。JWO方式の店舗ではスタッフが前陳のために店内を動き回っている。つまり新しい仕組みを入れても、重要なのは“人”というわけだ。

先端技術を導入して人手不足に対応する動きは加速しているが、DXを推進するために不可欠となる“ファクターX“とは、つまりは”人“であり、”誰がために鐘は鳴る?”という発想ではないだろうか。

※このレポートは講演内容をダイヤモンド・リテイルメディア流通マーケティング局がまとめたものです

各プログラムの詳細

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記事執筆者

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