delyがクラシルに社名変更!背景にある「クラシルブランド」急成長の理由

上林 大輝 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

レシピ動画サービス「クラシル」などを運営するdely(東京都/堀江裕介社長)は2025年10月、クラシルへと社名を変更した。背景には、「クラシル」ブランドの急成長と、販促支援事業の大幅伸長がある。いわゆるポイ活アプリの「レシチャレ」(25年11月より「クラシルリワード」から名称を変更)や、小売・異業種の自社アプリをつなぐ「クラシルリテールネットワーク」を通じ、メーカー・小売・消費者を結ぶ第三者型の販促プラットフォーム事業を拡大させている。

成長ブランドを核に次の段階へ

 2510月、delyは社名を「クラシル」へと改めた。クラシルの堀江裕介社長は「われわれのレシピ動画サービスからはじまった『クラシル』が1つのブランドとして大きく成長しており、社名も統一して知名度を上げていった方がいいと判断した」と理由を語る。

 「クラシル」は、162月にサービスを開始し、現在ダウンロード数4400万を突破している国内最大級のレシピ動画プラットフォームだ。約5万件のクラシル公式レシピのほか、一般ユーザーによる投稿レシピなど、幅広くコンテンツを発信している。日常的な使いやすさや、レシピへの信頼が消費者の購買行動のきっかけとなり、「クラシル」で見たレシピをもとに食品スーパーでの購入品を決めるユーザーも多いという。

 同社によれば、これまでは「『クラシル』を運営するdely」と説明する手間があり、採用・取引・ユーザー認知の面で非効率が生じていた面があったという。同社によれば、「クラシル」の国内認知度は全体で58.1%、このうち女性のみでは76.4%と高い認知度を誇っている。ブランド認知度の高さをより活用できる体制をめざし、生活者に親しまれる「クラシル」を社名に据えたというわけだ。

クラシルの堀江裕介社長

消費者・メーカー・小売の3方よしを実現した「レシチャレ」

 クラシルの25年3月期通期の売上高は131億円、対前期比32.4%増とめざましい成長を遂げている。

 同社の事業は、「クラシル」を中心とした「認知(メディア)」事業のほか、「購買(販促)」、「その他」の大きく3つにわかれている。中でもとくに成長が著しいのが「購買(販促)」事業だ。同事業の25年3月期売上高は同421%増の32億円と圧倒的な伸びを見せている。

 購買事業の中核となるのは、「レシチャレ」というレシート買い取りサービスだ。成果報酬型でユーザーにポイントを付与する「リワードマーケティング」サービスとなっている。この「レシチャレ」は、もともと「クラシルリワード」というサービス名称だったが、25年11月より名称を変更した。ポイント還元方法の1つであった「レシチャレ」自体が高い支持を集めていたことを理由に、社名変更の経緯と同様、認知度の高い名称をサービス名に据えたかたちだ。

25年11月、「クラシルリワード」から「レシチャレ」へとサービス名を変更した

 ユーザーがポイントを獲得する方法はさまざまだ。メーンとなるのが、対象となる食品スーパーやドラッグストアなどで指定の商品を購入し、そのレシートを撮影・投稿すると、アプリ上でポイントがもらえる「レシチャレ」。日々のアプリログインや、1日の歩数に対してもポイントが付与される。ユーザーはためたポイントを利用することで、各種共通ポイントやギフト券、商品引換券などの特典と交換できる。

 クラシルによれば、この「レシチャレ」が高い支持を集める理由は、消費者からだけでなくメーカーにとってもメリットが大きいからだという。ユーザーが「レシチャレ」の対象となる商品を購入し、レシートをアップロードした際のポイント還元には、該当商品を販売するメーカーからクラシルに支払われた販促費が原資となる。この際、メーカーからクラシルに支払われる販促費の総額は、「レシチャレ」によって購入された商品数に対応した還元分のみとなっている。つまり、メーカーは「レシチャレ」の販促効果によって売れた分だけ販促費を支払えばよいため、費用対効果を明確化できるのだ。

 たとえば、あるメーカーが「この商品を買った人に50円分のポイントを付与」と設定する。対象商品の購入者は、購入時のレシートを投稿するだけでクラシルアプリ内に50円分のポイントが付与される。ユーザーはポイント還元により、実質的に店頭価格より安く購入できる。メーカーは、「レシチャレ」掲載期間に購入された商品数×50円の販促費を支払えばよいというわけだ。

 堀江社長は「成果報酬型で運営しているため、メーカーは実際に購入した人に対してのみにコストをかけることができる。『クラシルリワード』を活用することで、チラシや一斉値引きのように、買うかどうかわからない人への支出がなくなる」と話す。

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記事執筆者

上林 大輝 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

2000年生まれ。埼玉県出身。法政大学文学部英文学科卒業後、地方新聞社の営業職を経て株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。

流通小売の専門誌「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部で執筆・編集を行う。

趣味はお笑い鑑賞、音楽鑑賞。一番好きなアーティストは椎名林檎。

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