廃材処理コストを減らすマルエツの挑戦、有価物分別に共同ルート回収
マルエツが他社と始めた共同回収
このモデルを活用して昨年6月、九州で行われたのがイオン九州やトライアルホールディングスをはじめ九州内の有力企業が参加する「九州総務連合会」による共同の有価物ルート回収だ。詳細は、『九州で進む「共創」 ゴミ処理コストを激減させ資源にする「有価物ルート回収」の成果とは』を読んでほしい。
首都圏でもこのモデルを使って今年2月、マルエツなど2社が共同で産業廃棄物と有価物のルート回収を実施した。
意外なことだが、産業廃棄物と有価物のルート回収モデルを構築したマルエツにとっても、自社主導で他社と「共同」でルート回収を行うのは、初めての取り組みだという。
「従来は自社でルート回収をしてきたが、飛び地出店などドミナントの空白があるエリアを当社も抱える。そうした店舗では他社と共同回収ができれば効果的だ」との見方を田島氏は示す。
今回の回収対象店舗はマルエツ5店舗、他社2店舗の計7店舗で、それぞれ神奈川県川崎市、横浜市、東京・大田区に位置する。なおマルエツの5店舗は、花月園店(横浜市鶴見区)、朝日町店(同)、京町店(川崎市川崎区)、出来野店(同)、西糀谷店(大田区)である。
ただし、今回の共同回収は急遽実施が決まったもので、もっと効率の良いエリアでルートを構築した方がメリットはでやすいという。
そうしたなかで今回の目的は「本当に効率的に共同回収できるのかの検証だ」と田島氏は説明する。
今回、マルエツ 出来野店で、回収の模様を取材した。既述したとおり、トラック2台体制で、産業廃棄物と有価物にわけて回収作業を進めていく。マルエツでは半年に1回の頻度で回収しており、全社で産業廃棄物と有価物あわせて年間200~300トンを回収しているという。
店舗によって廃棄物の保管場所は当然異なるが、出来野店の場合は、店舗の納品口の奥まった場所に、廃材置き場がある。「産業廃棄物」「産業廃棄物(プラスチック空容器専用)」「有価物」に分けられ、カゴ車ごとに分別されて保管されている。
それぞれカゴ車にストレッチフィルムを上から下まで巻いているが、これは保管場所をきれいに保つ店舗側の工夫だという。こうすることで、カゴ車から廃材がこぼれ落ちることがなくなる上、透明なフィルムで包んでいるため中身が見えて、違うゴミを捨てることがなくなるからだ。各カゴ車には「木製品、複合材、空容器、ガラス、トレイなど 上記は廃棄便で回収ができます」という具合に注意事項が明記されている。
回収を行うエコモーション(東京都)によれば「マルエツは年々ルールの順守が徹底されており、分別状況の良い店舗が増えている」という。
店舗側の地道な努力の賜物だが、マルエツ総務部とエコモーションによる取り組みの成果でもある。
田島氏は説明する。
「収集運搬作業を行ってもらっているエコモーションとは、毎回、全店のゴミ排出状況の写真を撮り、店別のできばえを報告してもらっている。課題を次回の改善点として共有することで、年々改善を図っている」
収集運搬コストを引き下げるためにもっとも大事なことは、1店舗ごとの排出量を正しく事前に把握することだと田島氏はいう。
できるだけ短い総移動距離で、積載率100%に近づけられれば、1店舗あたりの処理コストが最小化されるからだ。もちろん、廃材を事前に分別し、直置きではなく台車などに置いておくと、回収時間も少なくて済むという。
共同回収はメリットがはっきりしている一方で、個社そして店舗ごとの意識改革が不可欠だ。それを実行したうえで、店舗網が薄いエリアで競合する企業同士が「非競争領域」として共同回収を行えば、お互いコストを下げることができる。そのうえで、浮いたコストをお客に還元することができれば、お客、店、競合店すべてがウイン–ウインとなる。
共同回収の動きはまだ始まったばかりだが、その可能性は大きそうだ。