SHIBUYA TSUTAYA、アメリカの紀伊国屋書店の進化が示す小売の未来

坂口 孝則(未来調達研究所)
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電子化とネットに押され縮小続く書籍と書店市場

「えっ、初版が1万部?」私が昨年に幻冬舎から新書『買い負ける日本』を出版したとき、知り合いの編集者から驚かれた。「そうなんですよ。もっと初版部数が多かった本もあったんですが」と返したら、「初版1万部はかなり多い」という意味だった。

 私の処女作が世に出されたのは2007年。たったの17年前だが、書籍も雑誌も市場の規模が違った。書籍と雑誌の合計販売金額は2兆円を超えていたが、今ではほぼ半減。約1万7000店舗あった書店の数も、現在はなんとか1万店舗を維持しているという状態だ。

 市場縮小の理由は電子書籍の普及ももちろんあるが、それ以上に、ネットで情報収集が完結するようになったことが大きい。「ネット上で記事や文章は読むが、本は読まなくなった」という人が増えたのである。

 読書習慣が残る年代層を何とか取り込もうとしているのか、書店に行くと健康や病気に関する書籍であふれかえっている。しかし、彼ら彼女らも老眼が進んだり体力が落ちたりすれば、昔のようなペースや量で本を読みこなすことはできなくなる。また、親世代が書店に行く習慣がなくなれば、その下の世代はより、書店に赴く機会がなくなるだろう。

収益モデルを革新した「SHIBUYA TSUTAYA」

 一般的な書籍の粗利益率はおよそ2割とみられる。1時間で1万円分の書籍を売っても、アルバイト2人分の時給が出せるかどうかというレベルだ。また、書籍は取次を介して返本できるという特殊な仕組みが存在する。しかしそのために返本率は平均で30%にも上り、「返本物流」のコストもばかにならない。

 このように書籍のサプライチェーン全体に課題が山積するなか、一部の書店ではビジネスモデルを変革することで、収益向上を図ろうとする動きが加速している。
たとえば、今年4月にリニューアルした東京・渋谷にある「SHIBUYA TSUTAYA」。

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