メニュー

酒類、値上げから量販店での購買意欲減退が顕著 日本酒類販売の23年3月期決算

日本酒類販売(東京都/倉本隆社長)の2023年3月期決算が明らかになった。連結売上高5510億7900万円(対前期比7.4%増)、経常利益37億9300万円(同67.0%増)、経常利益率0.69%(同0.25pt増)、(親会社株主に帰属する)当期純利益24億8100万円(同79.3%増)となった。
単体では、売上高5235億6400万円(同7.0%増)、経常利益34億2900万円(同48.0%増)、経常利益0.66%(同0.19pt増)、当期純利益24億7400万円(同59.9%増)と連結単体ともに増収増益で着地した。
以下では、同社倉本社長の発言を抄録する(文責・千田直哉)

 3年後売上6000億円めざす

日本酒類販売の倉本隆社長

 235月に新型コロナウイルス感染症の位置づけが「5類」となり、業務用市場において、都市部では回復が顕著となってきたが、地方ではなお慎重な動きが散見される。生活様式の変化による消費行動の変化や物価上昇による節約志向の高まりなど、酒類業界の環境は引き続き厳しい。

 このような状況の中、22年から酒類食品メーカー各社による前例のない規模の価格改定が実施された。

 当社は226月に改正施行された「酒類の公正な取引に関する基準」の順守徹底を図りつつ全社を挙げて、取引先との粘り強い交渉などで卸売業として、適正な納入価格への移行に取り組んだ。

 243月期は、「お酒と食でつながりを『価値』に変える会社」を経営ビジョンとする第1次中期3か年計画の初年度となる。卸売機能の拡充、物流最適化を含むローコストオペレーションのさらなる強化推進に努め、3年後のグループ全体の売上目標6000億円の達成を目指す。 

 単体の商品別売上は下記の通りだ。

【商品別売上(単体)】

①和酒

清酒  235億3200万円 対前期比1.9%増
焼酎甲類 147億6600万円 同4.6%減
焼酎乙類 789億7600万円 同1.4%増
その他  23億5100万円  同0.5%増
和酒計  1196億2700万円 同0.7%増

②洋酒

国産洋酒 1036億3300万円 同4.8%増
輸入洋酒 493億9800万円 同15.3%増
洋酒計(ビール系除く) 1530億3100万円 同8.0%増

③ビール系

麦酒 891億6400万円 同20.0%増
発泡酒 189億1900万円 同3.4%増
新ジャンル 479億9000万円 同4.2%減
ビール系計 1560億7500万円 同9.4%増

 カテゴリー売上では和酒については量販店での価格上昇による購買意欲の低下、さらに組織量販店での取引減少の影響もあったが、飲食店や各種イベントの再開を受け、業務用市場の大幅な回復傾向となり、前年実績を確保できた。

 洋酒については、業務用業態の復調にともない、高額輸入商品の売上増加やスパークリングワインの需要が拡大し、前年を上回ることができた。国産洋酒はウイスキーの伸びもあり同4.8%増となった。

 ビール類については、業務用の生樽、瓶の回復に加え、各メーカーによる家庭用新商品の活発な展開もあり同9.4%増となった。

 なお、RTDReady to drink)についてはレモンサワーの伸長が踊り場を迎え前年100%で着地している。

 次にチャネル別の売上について一覧でまとめた。

 

チャネル別ではスーパーの不振がくっきり

【チャネル別売上(単体)】

酒販店(うち一般店) 53億5200万円 対前期比14.5%増
酒販店(うち業務用) 784億6000万円 同47.3%増
二次卸 852億6800万円 同4.2%増
組織小売業
コンビニエンスストア 587億7200万円 同3.5%増
スーパー 1242億8700万円 同6.0%減
ディスカウントストア 561億300万円 同0.1%減
ホームセンター 164億9900万円 同2.1%増
ドラッグストア 441億7500万円 同3.9%増
その他 39億5400万円 同7.3%減
ネット通販 371億4100万円 同15.5%増
外食 83億4200万円 同74.3%増
その他 52億500万円 同42.9%増
合計 5235億6400万円 同7.0%増

 業態別売上高の家庭用では、原油高や原材料の高騰による物価上昇を受けた節約志向の高まりなどで厳しい状況が続き、若干の減少となった。しかし、ドラッグストアは海外からの入国規制緩和によるインバウンド需要の回復で同3.9%増。ネット通販はECを活用するようになった層の定着などが後押しして同15.5%増と伸長している。