「NRF APAC」現地ルポ アジアの先進企業が実行する「AI時代の新小売戦略」

文:阿部 幸治 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局次長)

2025年6月3日~5日の3日間にわたって、NRF 2025: Retail’s Big Show APAC(以下、NRF 2025 APAC)が開催された。

アジアを代表する有力企業のトップたちが登壇、最新テクノロジーの活用を含め、小売業が直面している課題の解決と成長戦略が語られた。日本の小売業は何を学び、どう実践すべきか?

“小売業の限界を超える”学びと実践の場

 NRF 2025 APACは、毎年1月にニューヨークで開催される全米小売業協会(NRF)の年次総会のアジアパシフィック(APAC)版。2回目の開催となった今回は、前回を上回る9500人が参加、70カ国以上から集まった。展示企業数も250社から300社へ、講演数も49から75へと大幅に増加した。

 NRF 2025 APACのテーマは「リテール・アンリミテッド」、小売業の無限の可能性を解放しようという意味だ。

「ロッテのリテール・トランスフォーメーション」講演風景
NRF 2025 APACの登録者数は9500人で、前回よりも大幅に増えた。写真は「ロッテのリテール・トランスフォーメーション」講演風景で、右がロッテリテールグループ リテール本部副会長兼グループCEOのサミュエル・キム氏、左がフェアプライスCEOのヴィプル・チャウラ氏

 チャネルの垣根、デジタルとリアル店舗の垣根が溶け、AIがビジネスのゲームを変え、リテールメディアが収益構造の前提を変えようとしている。生き残るために小売業は「限界のない存在」へと進化しなければならない。その姿を見つける場として、多様性に満ち、世界の中間層の3分の2が住まうAPACがふさわしいという趣旨だ。

 本稿では、基調講演で語られた有力APAC小売の戦略を中心に、日本企業にヒントになること、チャンスとすべきことを明らかにしていきたい。

 講演で語られた主なテーマは以下のとおり。

●AI活用事例と、エージェンティックAIが小売ビジネスをどう変えるか

●オンラインとオフラインの拡大戦略、統合戦略

●顧客体験の刷新および、顧客の期待に応える提案や商品の実現

●従業員体験の向上

●リテールメディアに対する期待と現実

 1テーマに絞ったセッションもあれば、複数テーマを含むかたちで企業戦略が語られた基調講演も多かった。とくに生成AIをはじめとするAI活用は、多くの講演で議題の1つに挙がった。

 ただし

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阿部 幸治 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局次長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長、19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。25年4月より編集局局次長に就任。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ。

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