セキチュー、新たな100年への挑戦

高浦佑介 (ダイヤモンド・ホームセンター編集長)

隠れた名企業

 今年でホームセンター(HC)事業に参入して50周年を迎えたセキチュー(群馬県/関口忠弘社長)。取材を重ねた私の印象は「隠れた名企業」である。なぜそのように感じたのか、順を追って見ていこう。

セキチュー
セキチューは今年50周年を迎える

 まず、簡単に沿革を振り返る。材木商を源流とするセキチューは1970年代から積極的に事業ドメインを拡大した。75年8月には北関東初となるHC「セキチュー大間々店」を開業。予想を超える反響を呼び、好スタートを切った。

 77年に社名を「関口木材」から「セキチュー」に変更し、HC事業へ一本化するとともに、群馬県内への店舗網を急速に拡充した。初期は群馬地盤を固めるため、「高崎店」(76年)、「沼田店」(78年)など主要都市に連続出店し、客層を広げていった。また84年に、本社社屋を高崎市へ新築移転した。

 90年代には勢いそのままに県外展開を加速。92年に栃木県へ初進出したほか、94年に株式を店頭公開し、知名度・資金力を向上させた。

 2000年代以降は商品・サービス面での専門性を深掘りする時代となる。HC店内にペット用品専門「ペットワールド」、住宅リフォーム相談コーナー「リフォームセキチュー」など専門コーナーを設けた。

 02年には東京都内に自転車専門店「サイクルワールド」をオープンし、埼玉県・東京都に出店を広げた。カー用品専門店「オートウェイ」と合わせて住関連の幅広いニーズをカバーできる体制を築いている。こうした専門店展開に加え、12年には高崎店に「資材館」「DIY館」を新設するなど、HC売場にも磨きをかけた。

 そして、14年2月に創業者・関口忠氏から2代目・関口忠弘氏へと社長交代し、第2創業期に突入した。

第2創業で「守りの攻め」へ

 創業から培った「地域密着型」経営を軸に、セキチューはそれぞれのフェーズに合わせた施策を実行してきた。近年は「接客力」を最大の武器と位置付け、高い顧客満足を追求している。関口社長自身も「接客は誇れる強み」と語り、人手と知識を要する自転車、リフォーム、園芸、DIYなどの部門をとくに強化している。

 たとえば、高崎店は売場面積が約2200坪ある大型店。6棟構成のうち「生活館」ではトイレ・洗面・バス・キッチンなどを展示する充実したリフォーム売場へと改装し、商品知識豊富なベテランスタッフが専用カウンターで丁寧な接客を行う。こうしたサービス強化により、顧客が商品をじっくり比較検討できる環境が整えられている。

 リフォーム売場はコロナ禍の改装で拡張され、従来から強かった自転車部門とともに売上・顧客満足を押し上げているという。

 売場面積が約4000坪の超大型店の上尾店は、セキチュー全店で売上ナンバーワン店舗だ。21年2月にリニューアルを実施。駐車場を拡大したほか、顧客から支持の高かったリフォーム売場を入口付近へと移動し、売場面積も拡大した。24年9月には食品スーパー(SM)「生鮮市場TOP」を誘致し、ワンストップで買物できる普段使いの複合商業施設へと進化させている。

 既存店のリニューアルにも注力しており、多くの店舗はコロナ禍に大規模改装を実施した。壁・床の貼り替えといった設備面の刷新に加え、最新のMD(商品戦略)を導入。商圏のニーズに合わせてカテゴリーの拡縮を行うことで品揃えと売場の魅力を向上させた。これらの改善は顧客の店への印象を一新し、従業員の仕事への意欲向上にもつながっている。

 組織面では14年の社長交代以降、人事制度改革を進め、明瞭な組織体制の構築にも取り組んできた。守りを固めた上で新たな投資に舵かじを切り、人材育成や店舗改装により攻勢をかける「守りの攻め」の姿勢が、近年の成長を支えている。

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記事執筆者

高浦佑介 / ダイヤモンド・ホームセンター編集長

2010年東京大学文学部卒業、12年同大学院修士課程(社会心理学)修了。14年ダイヤモンド・リテイルメディア入社。『ダイヤモンド・チェーンストア』誌の編集・記者を経て、19年4月よりダイヤモンド・ホームセンター誌編集長。ホームセンター業界のトレンドに精通しており、TV・ラジオなど数々のメディアに出演するほか、ダイヤモンド・リテイルメディアYoutubeでも業界解説動画を配信している。

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