セキチュー、新たな100年への挑戦
地域密着の実践方法
セキチューの事例は、地域密着型の中堅チェーンが大手と差別化するヒントに満ちている。
まず、専門分野を深掘りする強みとして、前述のように高品質な対面サービスに注力している。一般的にHCはセルフ販売によるローコストオペレーションを志向するが、セキチューが強化しているリフォームは接客が必要だし、自転車の修理サービスを内製化するにも人手がかかる。
これらの事業に共通しているのは、「簡単には儲からなくて、手間がかかるが、顧客が望んでいる」ことである。これは同業他社が参考にしようと思っても、容易ではない。
また、地域特性に応じた品揃えを徹底している。関東1都5県にHC24店舗を展開するなかでも、画一的ではなく店舗ごとに地元需要を反映した商品構成とサービスを追求。チェーンストア経営により標準化・効率化するところと、個店経営による地域ニーズへの対応をバランスよく使い分けている。
さらに、地域連携型イベントも積極展開し、集客とブランド浸透を図っている。地元とのコラボ企画も特色で、新日本プロレスの全国シリーズ戦を協賛した。24年12月には上尾店屋上に特設リングを設営しプロレス興行を開催するなど、非日常的な体験で来店を促している。群馬県内では地元鉄道(上毛電鉄)の車両に50周年ラッピングを施し、キャラクターをあしらった電車広告で生活者への感謝を発信している。
こうした取り組みは、地域行事や交通インフラを活用した「地域密着型広告」とも位置付けられ、生活者と強いきずなを築く要因となっている。加えて、DIYや園芸ファン向けのコンテスト開催、全品10倍ポイントセールや会員抽選キャンペーン実施など、顧客参加型施策でロイヤル顧客を増やしている。
総じて、セキチューは「現場接客+地域連携+ 参加型企画」の複合戦略で、大手HCが苦手とする〝顔の見える〞サービスとコミュニティとのきずなを武器に差別化を図っている。
100年企業に向けた挑戦
地域のインフラになること。それこそがリージョナルチェーンの生き残り策である。簡単に言うことはできるが、実践するのは難しい。
実際、セキチューは11年の東日本大震災発生時にも店舗営業を継続し、地域の生活支援拠点としての役割を果たした実績がある。こうした姿勢を地元の住民は忘れない。従業員にも浸透しており、関口社長のインタビューでも「社員一人ひとりが目的を持ち同じ方向を向けば大きな力になる」と語るように、従業員を大切にする文化が社内に定着している。
経営トップが「50周年を迎えられたのは従業員や取引先、お客さまに支えられたおかげ」と感謝する言葉にも表れているように、セキチューは地域住民や従業員との信頼関係を何より重んじている企業であると言えよう。
QC(品質管理)サークル活動も同社の特徴の1つだ。SM企業に学び、本部主導ではなく、現場スタッフが案を出し合って、自発的に課題解決に向けた改善活動を続けている。
競争が激化するなか、HC業界では生き残りをかけた再編が続いている。こうした状況では、顧客ニーズに即した他社にないサービスと商品を磨くことが不可欠だ。少子高齢化や業態を超えた競争が激化する厳しい外部環境の中でも、地域顧客とのきずなと豊富な商品・サービス提供力を武器に、セキチューは地域密着型HCの雄として独自ポジションを築き続けるだろう。
本特集では、関口忠弘社長のインタビュー、創業者・関口忠氏が04年に語った経営の考え、50年間のセキチューの歩み、旗艦店舗の高崎店、上尾店の店舗レポートを収録している。
セキチューは50 年の歴史が証明する「地域に寄り添う経営」の強みをベースに、新たな100年に向けた挑戦を続けていく。









