神戸物産、外食事業でもローコスト運営を志向! 「神戸クック・ワールドビュッフェ」の新戦略

植芝 千景 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

初期投資を抑えた小型店戦略が始動

 ワールドビュッフェが次なる成長戦略として打ち出すのが小型店舗フォーマットの展開だ。その1号店として、25年1月に「神戸クック・ワールドビュッフェ ニッケパークタウン加古川店」(兵庫県加古川市:以下、加古川店)が直営店としてオープンした。

 従来の店舗は平均店舗面積が約280坪、平均席数が約270席を標準としていたのに対し、加古川店は約175坪、183席へと規模を縮小している。商業施設の標準的な区画に収まる設計にしたことで、出店の選択肢が大幅に広がった。

 加古川店では、限られた面積でも大型店と遜色ない体験価値を提供するための工夫を随所に施した。具体的にはビュッフェ台のスペースを優先的に確保し、既存店と同様に約100種類以上のメニュー提供を維持。その一方で、従来店舗に設置されていたキッズルームや個室は廃止し、代替策として全席に間仕切りを設けた半個室風の座席を導入するなど、快適性にも配慮した設計となっている。

「神戸クック・ワールドビュッフェ ニッケパークタウン加古川店」の半個室風の座席
「神戸クック・ワールドビュッフェ ニッケパークタウン加古川店」の半個室風の座席

 収益性の確保にも抜かりはなく、設備投資の見直しにより、初期投資額を抑制した。また、従来は無制限だった滞在時間を2時間制へと変更し、回転率を高めることで、席数の減少をカバーしている。収益性と体験価値のバランスを追求した新しいフォーマットを確立したかたちだ。

 今後、神戸物産ではこの小型店フォーマットを、ワールドビュッフェ業態におけるFC展開の新たな柱と位置づけ、既存フォーマットと並行して展開を進めていく方針だ。教育・指導体制の徹底と収益性の確保を両立させながら、段階的に店舗数を増やしていく。

 同社の外食・中食事業は、グループ全体に占める売上高構成比こそまだ小さいものの、物流や商品開発、購買ネットワークといった既存の経営資源を最大限に生かせるポテンシャルの高い領域でもある。ワールドビュッフェの進化は、「食の総合企業」を掲げる神戸物産の成長戦略のなかで、確かな存在感を放ち始めている。

1 2 3

記事執筆者

植芝 千景 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

同志社大学大学院文学研究科(国文学専攻)修士課程修了後、関西のグルメ雑誌編集部を経て、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。関西小売市場やDX領域を中心に取材・執筆を担当している。現在は大阪府在住。

まとまった休日には舞台・映画鑑賞を楽しむほか、那智勝浦へ弾丸旅行に出かけることも。世界各国の家庭料理を再現するのも趣味のひとつだが、料理に入れたスパイスで歯が欠けたので今は控えめに取り組んでいる。

関連キーワードの記事を探す

© 2025 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態