万引きロス対策も、DX人材育成も「共創」の時代!小売業の連帯つくるチームK.Oの成果とは
セルフレジ普及で緊急対策必須
レジ商品ロス問題
セルフレジの普及によりレジでの不正が増えており、食品スーパーの経営に大きなインパクトを与えている。そこでセッションでは「レジ商品ロス防止」をテーマに「待ったなし!!セルフレジの商品ロス対策。傾向と対策!」というタイトルでセッションが行われた。
売上比073~0.75%。
これは、ある国内メーカーと小売企業がカメラ映像とレシート情報を突合した結果算出された、セルフレジにおける「推定商品ロス率」(売上比)だ。
ゲスト出演したイオン九州デジタルトランスフォーメーション担当の川村泰平上席執行役員は「(イオン九州では)正確に算出できているわけではないが、売上比で0.7~0.8%程度が”悪意のある”数値だが、セルフレジの場合は(うっかりミスもあるため)さらに高い商品ロス率となる」と明かす。
単純に利益率1%未満の企業であれば、その利益がほぼ吹き飛ぶ計算になり、事態は深刻だ。
対策として従業員による監視の目も強めているものの、その「正義感」がかえって「誤認」を増やすこととなり、従業員に後悔を、お客に不快感を与える「悲劇」の温床となっている。
しかし現実的には、人手不足の観点からセルフレジなど決済作業の無人化・省人化はもはやスーパーマーケットにとって不可欠だ。
そうしたなかチームK.Oでは小売業のみならずセルフレジ開発企業も巻き込んで、どんな対策を打つべきかを話し合い、ノウハウと実践の共有を進めている。
2月22日には37社、123名が参加し、セルフレジの不正防止についての意見交換勉強会を開いた。現場を取り仕切るレジ担当者も参加。「レイアウトで抑止力を高める方法」などセルフレジ運用面でのノウハウやさらなる課題が共有された。
「業界みんなが困っているのなら、社外の人同士で集まり意見を交換し合えばいい。実際にやってみたところ、非常に大きなニーズがあることがわかった」とライフの尾崎氏は語る。
このように、セルフレジの商品ロス対策は喫緊の問題だが、その前提には「従業員とお客の安全の確保」がなければならない。
だからこそ「現場でセルフレジを担当する『アテンダント』を(防犯に目を光らせる)『ポリス』にしてはいけないというのが小売の思いだ」と尾崎氏は強調する。
そこでチームK.Oでは、①データの目(画像確認や購買、レシート分析)、②人の目、③機械の目(カメラやモニター)に加えて、社内への通報制度、警察との連携、業界で一丸となることなどを骨子としたさらなる「目」をつくることで、改善させたいという。
「海外は小売業主導のロス対策に関する勉強会があるが、日本にはまだない。小売主導でセルフレジの商品ロス対策を考える勉強会をつくっていきたい」と尾崎氏は抱負を述べた。
このように小売業界はいまさまざまな課題を抱えている。それらは、一社では解決できないことや、個社単位では「疑問すら持たないような」大きな課題だったりする。
チームK.Oはこれら課題を解決するために、そして小売業界を魅力的で持続的成長できる産業にするために、企業の枠を超えて共創し、具体的に行動する集団だ。自分たちの企業を内側から変えたいという意思ある人も、業界や自社の将来に漠然とした不安を抱える人も、このチームK.Oに参加し社外の知見を得るだけでも有益なはずだし、その知見を社内に広めたいという行動を起こしたくなることだろう。