九州で進む「共創」 ゴミ処理コストを激減させ資源にする「有価物ルート回収」の成果とは
知られざる有価物ルート回収の意義と、これまでの課題とは
まず、有価物回収とは何か、これまでどんな課題を抱えていたのかについて説明したい。
店舗ではさまざまなゴミが出るが、事業者から出るゴミは「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分けられる。
多くに知られていないこととして、「産業廃棄物」に含まれる鉄や非鉄金属などの金属類は、丁寧に分別することで、「有価物」として業者から有料で買い取ってもらうことができる。店舗で出る有価物としては、壊れた什器や駐輪場に放置された自転車や鉄くずなど多岐にわたる。
こうした金属ゴミは、今回回収作業を行ったエコモーションによると、食品スーパー1店舗で年間およそ400~500kgほどにのぼるという。各社はこれまで、ゴミがバックルームなどにたまると、各店ごとに半年に1~2回ほどのペースで業者に依頼し、有価物ではなく産業廃棄物として廃棄物処分をしていた。その処理には費用が掛かる上、回収車両のチャーター料金もかかる。
一般的に、1回依頼するごとに、車両チャーター料金として1台あたり1日2~3万円、処理代は6~8万円程度かかるという。たとえば100店舗展開するチェーンストアで、各店が年間2回業者に依頼していたとすると、それだけで年間コストは1800~2000万円にのぼる計算になる。1店舗あたり約20万円。その予算を店舗の改修や備品購入に充てられるとすれば、店としてはかなりのことができる。それぐらい産廃処理費用のインパクトは大きいのだ。
くわえて、頻繁に回収できないことから、使わない什器などの金属ゴミがたまり、それがバックルームなどの店舗空間を圧迫することも大きな問題だ。バックルームの混雑につながる上、ゴミの保管に賃料を払っていることになるからだ。
かといって、有価物として回収してもらうためには、店舗側で事前に分別するなど手間がかかるうえ、回収できるもの、できないものは何か、どんな形態であれば回収できるのか(たとえばガラスと金属が一体化しているものは回収できないなど)という廃棄物に関する知識が必要になる。さらには、1社ごとでは回収できる金属ゴミのロットが小さい(それゆえこれまでは1店あたり年に1~2回しか回収車をチャーターできなかった)ため、頻繁に回収車を依頼することは難しいという問題もある。
こうした課題は、九州総務連合会の加盟企業が、等しく抱えるものであった。そこで各社が連携し、廃棄物および廃棄物の分別に関する正しい知識を身につけ、共同で有価物回収を行うことを決めた。それにより①廃材置き場の衛生化、②有価物買い取りによる回収コストの削減、③廃棄物総量削減に伴う、環境負荷の低減、を実現し、さらなる分別意欲の向上という正のスパイラルを回していくことを狙いとしている。