イオン、セブン&アイも動く!小売業に必要な非競争領域の設定と協創!「チームK」の挑戦

阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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九州で進む共創 ライバルが手を組む衝撃の一枚

イオン九州柴田社長が公開した、イオン店舗にトライアルの配送車両が届ける衝撃の一枚
イオン九州柴田社長が公開した、イオン店舗にトライアルの配送車両が届ける衝撃の一枚

 次に事例として挙げられたのが、地域での連携の取り組みである。ここではイオン九州社長の柴田祐司氏がオンライン登場。トライアルホールディングス(トライアルHD)とのタッグから始まり、22年8月に誕生した「九州物流研究会」。いまや13社が参加して、小売共同物流モデルの実現に取り組んでいる状況と成果を説明した。

 環境問題、2024年問題、物流コスト高騰、九州の人口動態の変化など環境が厳しさを増すなか、物流問題を抜本的に解決するためには、個社の取り組みでは限界がある。

 そこで「物流は原価については競争で決めなければならないが、その先の、店に商品が入るところまでは一緒にできる、と意見が一致し、話を進めていった」(柴田氏)。

 具体的には、①仕入れ物流、②販売物流における相互配車と③拠点集約を検討領域に入れた。仕入れ物流については、メーカー物流会社との相互配車を行うもので、特段システム化が必要ないため短期間で実現可能だ。一方、拠点集約は、従来は個社専用のセンターから配送しているが、エリアの汎用センターから各店に配送する考え。そのためには車両、倉庫、在庫の共有、そしてシステム化が必要となるため、中長期的な実現施策に掲げている。

 柴田氏とトライアルHD社長の亀田晃一氏が、九州内の各社トップを訪れ、参加を直接呼びかけていったという。現在、両社以外に西友、エレナ、サンリブ、西鉄ストア、トキハインダストリーなど小売業と配送業計13社が参加している(本稿では社名公表企業のみ掲載)。

 「(協業が)実現しなければ意味がないので、トライアルとイオンが組んだら何ができるかにまずは取り組んだ」(柴田氏)と言い、イオン直方店へトライアルの車両が配送している「衝撃的」な写真を会場内で共有した。

 2022年12月1日から共同物流を開始。取組前と比べ、走行距離は1日あたり30㎞減り、空車走行距離は48㎞も減った。これを1年続けると、まだ2店舗だけでの取り組みであるのに、東京・ニューヨーク間と同じ約1万㎞を減らせる計算になるという。また、CO2排出量は年間12.6トンも減少する。

 「参画の輪を広げていきたい。九州外の企業でも研究会への参加は歓迎するし、各地で同様の動きもスタートしているので、ぜひ一緒に活動してほしい」と柴田氏は参加を促した。

 

 最後に北村氏は「勉強会という位置づけよりも“実践の場”にしていきたい。会社の垣根を超え、ぜひチームKに皆さん参加して下さい」と会場に訴えかけ、セッションを締めくくった。

 競争から共創へーー 一社では解決できない大きな問題を前にして、日本の小売業は一歩、進化の階段を上っていきそうだ。

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記事執筆者

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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