レディース衣料の会員制オンラインスタイリングサービス「DROBE(ドローブ)」が話題だ。メーンターゲットである「おしゃれが好きだが、服選びに自信がない女性」から支持を集め、2019年6月のサービス開始から会員数は順調に増加し、現在15万人を超える(2022年11月時点)。本稿では、同サービスを展開するDROBE(東京都/山敷守社長)の戦略に迫る。
スタイリストがAIを補完
「DROBE」とは、プロのスタイリストが見繕った服や靴、バッグなどをお客の自宅に郵送する会員制サービスだ。お客は商品を試着して気に入れば購入し、気に入らなければ返送できる。1回当たりのスタイリング料は、商品5点で税込3190 円(商品代金は別途)となっている。
サービス開始して以来、DROBEは順調に会員を増やしており、2022年11月時点で会員数は15万人を超えている。利用者の満足度も高く、1回のサービスで商品5点中1点以上を購入する平均確率(購入BOX率)は約80%をマークしているという。
サービス成功のポイントは、ターゲット層である「ファッションは好きだけど服のチョイスに自信がない、もしくは迷ってしまう女性」に対して効果的にアプローチできている点にある。逆に言えば、お金を毎回払ってでもファッションをスタイリングして欲しいと考える人が、ある一定層いるということだ。
改めて、サービスの細かい流れを紹介しよう。まず、利用者はLINEでDROBEを友だち追加し、70問のアンケートに回答する。内容は、自身の体型や予算、好みのファッションなどだ。このアンケートへの回答をもとにAIとスタイリストは服の候補を15万着から20~40着まで絞る。お客はその商品をLINEで確認し、「欲しい」「いらない」をチョイス。最終的にスタイリストがバランスを整え、紹介する5着を選定したら、いよいよ商品の発送となる。
商品が届いたら、同梱されているスタイリングカルテを参考に試着する。その際、LINE上でスタイリストに着こなしを相談したり、質問をしたりすることも可能だ。そして、気に入った商品のみを手元に残し、不要なものは返送。お客は商品ごとにフィードバックを送り、次回からは発送頻度を決めれば定期的に商品が郵送されるという仕組みだ。
トレンドを抑えながらトレンドを押し付けない商品提案
このようにDROBEでは、AIとスタイリストを併用することでターゲット層のお客に対して有効なアプローチをしている。AIによって無数にある商品から網羅性の高い提案をするとともに、スタイリストが個々のお客の感性やコンプレックスを汲み取った提案をするというわけだ。
スタイリストの役割はそれだけではない。商品のチョイスを無難にさせすぎないための調整として、スタイリストはあえて5品のうち1品だけ「お客が普段は選ばなさそうな商品」を入れる。そうした“チャレンジ商品”の提案も混ぜることでお客に新鮮味を与えるという。このような工夫も同サービスが支持を集める理由の1つになっている。
そもそもDROBEのようなサービスがお客に受け入れやすくなったのには、SNSによるトレンドの多様化など昨今のファッション業界の変化によってお客の服選びが難しくなったという背景がある。DROBEが調査した統計データによると、「おしゃれが好きだが、服選びに自信がない女性」の割合は、女性全体の7割にもおよぶという。
ちなみにDROBEでは、お客のAIデータを活用して企画・製造したトップスやボトムスなどの自社商品も展開している。だが、そうした自社商品をお客に向けて積極的に提案するつもりはないという。DROBEとしては自社商品の売上を伸ばすよりも、サービスの継続率を伸ばすことが重要だからだ。
現在、DROBEの売上高の内訳は、商品の売上手数料とスタイリング料(サービス料)が「8対2」とのことだが、将来的にはこれを「6対4」にしていきたいという。今後はスタイリスト指名制などの制度を検討するなど、さらなるニーズへの対応とサービスのクオリティ向上を図る。さらに将来的には、B2B事業の展開も検討するとしており、DROBEのシステムを生かし、大手ファッション企業との協業を進めていく予定だ。