「甘〜い焼き芋」の自販機ビジネスが、社会貢献に繋がる理由とは
拡がる「障がい者自立支援」のための「焼き芋自動販売機」ビジネス
「農福連携(農業と福祉)を基軸に、障がい者の所得向上と働く場所を提供し、社会に貢献する」が経営理念の農福産業。焼き芋をはじめ、その他の野菜を障がい者施設と協力して栽培してきたが、問題は農業が薄利だったことにある。そこから課題解決のために「焼き芋を缶に入れて自動販売機で売る」というビジネスに乗り出した。そのことによって、障害者は、焼き芋の製造から袋詰めまで、工場での作業に集中できる。作業効率は上がり、たった2年間で、現在は、14府県に自販機が設置されるなど、大成功を収めた。
こうした焼き芋自販機の人気は、全国的な障がい者の雇用にもつながっている。埼玉県内にある障害者施設では、農福産業と同じ焼き芋をつくるための設備を置く予定だ。ゆくゆくは、地元産の焼き芋を、そのまま埼玉に設置した自販機に詰めることができるようにするプランだそうだ。
宮崎県を始め、九州、四国、関東では、自動販売機の焼き芋の補充や、スティール缶の洗浄、売上金の回収なども障がい者が担っている。「農業を手伝ってもらうというビジネスはこれまでもあったと思うが、製造から販売まで、ビジネスモデルの中核を障がい者の方に担ってもらうのは、私たちが初めてではないか。そういう意味では、皆さんのお役に立てているのではないかと思う」(松岡氏)
農福産業の取り組みはマスコミを通して伝えられ、多くの客がその理念に共感し、焼き芋を買っているという。
夢は全国にフランチャイズ展開
12月からは「そごう横浜店」の焼き芋フェア(12月1日〜8日)を経て、地下の食品売り場に自動販売機は常時設置になるなど、引っ張りだこの農福産業。これからの課題は、焼き芋の品質を保ちながら、いかに生産量を担保するかだという。
松岡氏は、「あくまで同社は障がい者の賃金アップに主眼を置いているため、現在のところは需要に合わせるために生産量を急激に増やすことは考えていない」という。
その代わりに、生産したさつま芋を焼き芋にするまでの工程を担う場所を、全国各地にフランチャイズ展開することを考えている。現在、すでに稼働している埼玉県の障がい者施設をはじめ、各県に製造拠点ができれば、焼き芋自動販売機の設置も障害者雇用の両方の需要を満たすことができる。
将来的には、全国各地で採れた地場のさつま芋を自動販売機で売り『ご当地焼き芋コンテスト』を開催するのが夢だ。
ユニークな戦略で焼き芋を販売する、農福産業。今後もトレンドを見据えつつ、美味しい焼き芋を誠実に、会社の出発点として拡げていくことだろう。