ローソン(東京都/竹増貞信社長)傘下のローソンストア100(同/佐藤隆史社長)は7月7日、ストアコンセプトの刷新を発表した。ローソンストア100は2008年から、「スーパーの品揃え、コンビニの利便性、100円均一のわかりやすさ」をコンセプトに掲げてきた。19年を境にこの方針を少しずつ転換してきたローソンストア100が今、ストアコンセプト刷新を改めて大きく掲げる理由とその目的は何か。同社執行役員で運営本部長代行兼広告販促部長兼顧客マネジメント推進チームリーダーの吉田貫臣氏に話を聞いた。
脱100円均一!変化するニーズに応える
1996年に誕生したローソンストア100(当時は「99エンオンリーストア」)が、ローソンの連結子会社として本格稼働を始めたのは2008年のことだ。以降、「スーパーの品揃え、コンビニの利便性、100円均一のわかりやすさ」をコンセプトに掲げ、全品100円(以下すべて本体価格)均一のプライベートブランド(PB)「バリューライン」を展開するなど、均一価格を強みとする店舗展開を長らく行ってきた。
冷凍食品やパン、飲料、日用品などに加え生鮮食品も取り扱うことで、コンビニエンスストア(CVS)としても、小型の食品スーパー(SM)としても利用でき、さらに100円均一という特徴ある店舗として成長してきたローソンストア100が、方針を転換し始めたのは19年のことだ。少子高齢化による小商圏化や、顧客ニーズの変化が進み、「100円均一でなくともよいから、日常的に必要な食品をもっと置いてほしい」という声が聞かれるようになってきたためだ。均一価格重視の弱点として、「100円で販売できないものは取り扱いが難しい」「100円で販売するために小容量、使い切りサイズの商品が多くなる」などがある。後者は人によっては便利に使える面もあったものの、その後訪れたコロナ禍では大容量、ファミリーサイズへの需要が拡大、この波はローソンストア100にも押し寄せた。
19年から段階的に、均一価格にこだわらずニーズに応えるかたちで生鮮や日配、ナショナルブランド(NB)の冷凍食品などを導入したところ反応は良好。コロナ禍以降はたとえば、1個100円でバラ売りだったトマトを、4~5個入りのファミリーサイズにしたところよく売れるなど、これまでは一般のSMで購入していたような規格の品物を求めて訪れるお客が目立つようにもなった。
もともと住宅街立地の小規模店舗を多く抱えるローソンストア100は、コロナ禍での「なるべく近くの、小さな店舗で必要なものだけを素早く買う」ニーズに合致する。実際に20年4月時点で客単価が上昇、とくに女性客の買い上げ点数増加が目立ち、対19年比で約1割の伸びが見られた。さらに、100円にこだわらず付加価値の高い商品が選ばれる傾向や、生鮮食品を基本として調味料や加工食品など必要なものをまとめて購入する行動も目立ったという。それまではCVSとしての利用客と、SMとしての利用客をおよそ半々と見ていたが、コロナ禍で後者が勢力を一気に伸ばすかたちになった。
これらの背景を踏まえローソンストア100は、今回新たに「献立応援コンビニへ。」を掲げ、ストアコンセプトの刷新に踏み切った格好だ。
献立作りをサポート「献立応援コンビニ」へ
「献立応援コンビニ」とは何か、吉田氏に聞いた。「コロナ禍で内食需要が高まった一方で、調理疲れや毎日の献立への悩みを抱えているお客さまも多い。ローソンストア100に来れば、今夜の献立が決まって必要な買物も完了する。そういう店をめざす」。具体的には、プライスカードやポップ、店内放送などを活用し「この食材をどう使えば手軽に一品が完成するか?」などのヒントを発信。さらにこれら単品の活用アイデアに加え、取り扱っている食材の組み合わせでつくることのできるレシピも提案する。これらのレシピやアイデアは本部からも提供するが、地域の特産品や味付け、調理方法を生かしたものを各店舗のスタッフが独自のPOPなどを作成し発信することもある。お客とのコミュニケーションのきっかけにもなり、発信を楽しんでいるスタッフも多いという。
ただし、この取り組みのために欠かせないのは生鮮食品を含む食品のラインアップの充実だ。ローソンストア100ではこれまでも週に2回、「新鮮青果市」を開催するなど青果の販売には注力してきた。しかしその結果、「麻婆茄子をつくりたいが、茄子は売っているのにひき肉がない」といった現象が起こることもあった。これまで精肉は売れ筋に絞って品揃えをしてきたが、「冷しゃぶ用」「トンカツ用」など夕食向きの素材にラインアップを変更。ほか、味付け肉や国産肉、ブランド豚なども品揃えした。
一方、ローソンストア100がこれまで取り扱ってこなかったのが鮮魚だ。これまでは一部の冷凍魚のみを販売していたが、今後はニーズを慎重に見極めたうえで品揃えの拡充を図る方針だ。「魚を求める人はつまり何を食べたいのか」を考え、調理前の鮮魚をそのまま販売するのではなく、マグロの刺身やタタキ、塩焼き、寿司など魚総菜中心の品揃えを検討している。
冷凍食品にも変化があった。もともと冷凍食品はローソンストア100の中でも人気が高く、すべての商品が100円、という売場だった。これまでは人気の理由は価格だとも考えていたが、19年以降からコロナ禍にかけての取り組みで、から揚げや餃子などNBの人気商品を販売したところ100円ではないにもかかわらず好調な売れ行きを記録。価格にこだわらず、ニーズの高い商品を充実させることの重要性を改めて感じたという。今後は、冷凍食品売場の面積をできるだけ広く確保し、よりニーズに応えたラインアップをめざす。
現在、100円以外の商品が多いカテゴリは生鮮食品だ。市場価格に応じて柔軟に価格を設定するためで、「シャインマスカット」など付加価値の高い商品も導入した。SMの特売品より安くはできないものの、卵6個1パック124円(税込)などCVSより安い価格設定をめざす。
とはいえ、均一価格という創業以来のスタンスを捨て去るわけではない。むしろ、「100円の商品をしっかり残すことが、大手SMとの差別化につながると考えている」(吉田氏)。21年7月現在、ローソンストア100の平均的な店舗では約6割が100円の商品だ。これまで100円にこだわった商品開発をしてきたからこそ、「100円おでん」や「100円おせち」などの人気商品が生まれた経緯もある。さらに、コロナ禍で伸びた主婦層だけでなく、シニア世代もローソンストア100の重要顧客層だ。シニア世代にとって、ローソンストア100は近くで、使い切りサイズを購入できる便利な店でもある。SMとしての品揃えの充実と、100円均一商品の充実の両立が、今後競合と戦っていくうえで重要な戦略になるとみていいだろう。今後は、まず人気の高いNBの導入でニーズを満たし、追って100円以外のPB開発も進めていく方針だ。
新たにウェブCMも 新規顧客の開拓に注力
ローソンストア100ではストアコンセプト刷新の効果として、1~2割の客数増加を期待しているという。加えて、生鮮を扱っていることを知らない層や、CVSなのか100円ショップなのかよくわからない、と感じている層に向けての発信力向上もねらう。
新ストアコンセプト発表以降、店頭やホームページ、SNSなどで「献立応援コンビニ」を打ち出してきたが、これは既存客に対する発信の意味合いが強い。7~8月を既存客へのアピール期間、9月以降は新規客の取り込みにも注力する期間とし、9月1日には新たにウェブCMを公開する。「昼食を食べ終わったと思ったら夕食の献立を尋ねられる」「何が食べたいか家族に尋ねても『なんでもいい』としか言われない」と苦悩する主婦が、「献立応援コンビニ」を通じて悩みを解消する内容。ローソンストア100について、日常的に食品を買う場所というイメージがまだまだ浸透していない現状を“伸び代”があるととらえ、新規客開拓に意欲的に取り組む構えだ。
今後、さらなる少子高齢化や消費の二極化の進行が予想されるなかで吉田氏は「これからの日本の食を支える業態として、ローソンストア100は非常にマッチした業態になっていく可能性を感じている」と話す。100円均一の利点を生かしつつも、100円に縛られず顧客充足のニーズをめざし、ミニスーパー(スーパレット)の要素を色濃くするローソンストア100。今後の動向に注目したい。