ドラッグストア大手のコスモス薬品(福岡県/横山英昭社長)は7月15日に、2021年5月期の決算説明会をオンラインで開催した。食品強化型フォーマットの高速出店で、全国の食品小売を恐々とさせている同社。22年5月期は調剤事業に本格参入し、さらなる成長を図ろうとしている。
好業績は「巣ごもりの恩恵」だけではない!
コスモス薬品の21年5月期通期業績は、売上高が対前期比6.1%増の7264億円、営業利益が同13.9%増の13.9億円だった。経常利益、当期純利益も2ケタの伸びを見せ、増収増益を果たしている。コロナ禍の影響による店舗建設の遅延などもあって、21年5月期の出店数は78店舗と前年並みにとどまった。期末店舗数は1130店舗となっている。
好業績の要因について、横山社長は「(好業績は)巣ごもり消費の恩恵だけではないと考えている。当社がめざす、近くて、安くて、便利、いわゆる『安・近・短』が今の時代のニーズにマッチした結果だ」と強調する。
徹底的に標準化された食品強化型フォーマット、他社競合だけでなく自社競合も厭わない怒涛の高速出店、EDLP(エブリデイ・ロープライス)政策による競合を圧倒する安さの打ち出しを武器とする同社。好業績は巣ごもり消費という一過性のものではなく、設立当社から続くこれら「経営理念」が消費者に受け入れられているため、というのだ。
今後もコスモス薬品は、出店の手を緩めない構えを見せており、横山社長は「今期(22年5月期)以降は年間120店舗を目標に出店していく。今のところ、契約も順調だ」と話す。22年5月期は100店の出店を計画しており、うち70店舗が関東・中部・関西エリアで、残りの30店舗が中国・四国・九州への出店となる予定だ。
調剤併設型開設にアクセル!コスモスのねらいは?
また、横山社長は決算説明会の席で、調剤事業に本格参入することを発表した。同社は19年から調剤併設店の展開をスタートしており、21年5月期末時点の調剤併設店の店舗数は10店舗。22年5月期は、新たに調剤併設店を20~30店開設するとしている(既存店への併設を含む)。
調剤併設店の展開について、横山社長は「『面分業』の時代に備え、便利でお客さまに喜んでもらえる売場づくりをしていく」とコメント。「面分業」とは、薬局が不特定多数の医療機関からの処方せんを受け付ける運営形態のことを指す。人口減少、高齢化を背景に、今後は調剤報酬が減額されることが予想され、これにより、処方せん発行枚数の少ない「門前薬局」が淘汰されると見られている。また、制度上の問題からアマゾンのようなEC勢の参入も当面ないとされている。
そうした中で、処方せん受け付けの主役となるのがドラッグストアだ。実際にドラッグストア大手は近年、調剤併設店の展開を加速させている。将来、調剤併設型ドラッグストア同士の競争となった場合、競合他社と比べて、圧倒的な集客力を誇るコスモス薬品に優位性があるのは間違いない。
コスモス薬品の調剤本格参入について、いちよし経済研究所主任研究員の柳平孝氏は、「まず、調剤薬局の導入は強い来店動機となる」としたうえで、「コスモス薬品で売上高構成比の約6割を占める『一般食品』の粗利益率は14.1%(21年5月期実績)。これに対し、一般的なドラッグストアにおける調剤事業の粗利益率は36~39%。調剤事業の拡大が利益の押し上げ要因となるのは確実だ」と話す。
柳平氏は、調剤併設型店の展開スピードについても言及し、「仮に1年30店舗ペースで出店していけば、4年で120店舗の調剤併設店が店舗網に加わる」と指摘。中堅ドラッグストアのカワチ薬品(栃木県/河内伸二社長)の21年3月期末の総店舗数は346店舗、うち123店舗が調剤併設型店舗となっている。もしコスモス薬品が今後1年30店舗のペースで調剤併設型店舗を開設していけば、数年で中堅プレイヤーに匹敵する規模になるというのだ。
調剤をめぐっては、食品スーパー大手のオーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)も、今夏出店予定の店舗で調剤薬局を併設することを明らかにしている。コスモス薬品にオーケー、絶大な集客力を持つ新たなプレイヤーの参入は競争にどのような影響を及ぼすのか。食品シェア奪取に注目されがちなコスモス薬品だが、今後は調剤の動向にも注意を払う必要がありそうだ。