ファンケル代表取締役社長 島田 和幸
無添加化粧品、健康食品を軸に小売業と連携し売上拡大をめざす
──現在、通販のほか直営店舗、ドラッグストア(DgS)、コンビニエンスストア(CVS)などの小売業でも販売をしています。
島田 無添加化粧品の通販事業を始めてしばらくすると、「実際に手にとって試してから、使ってみたい」というお客さまの声が数多く寄せられるようになりました。そこで、静岡と沖縄でテスト販売を行いました。これが成功したことから、95年より直営店舗から販売を開始しました。
直営店舗では、お客さまの肌や健康状態を見極めてから、本当に必要な商品を推奨するという販売スタイルを貫いています。「売らない勇気をもて」といわれるほど、強要せず、お客さまのことを第一に考える。これがファンケルの企業姿勢といえます。だからこそ、お客さまは安心して店舗に足を運んだり、通販をご利用されたりするのだと思います。
直営店舗での販売が軌道に乗ると、小売業からの問い合わせも増え、99年にCVSの「セブン-イレブン」でサプリメントを、2000年には「ローソン」限定で化粧品を展開するようになりました。とはいえ、当社のものづくりに対する想いや姿勢をきちんと理解してくださることを前提としていましたので、2000年代はそれほど配荷が進みませんでした。導入店舗が増えたのは最近のことです。
通販と直営店舗での限界、小売業との連携を強化へ
──今年4月、新社長に就任されました。
島田 これまでの持ち株会社体制を解消し、今年4月1日付で100%子会社のファンケル化粧品とファンケルヘルスサイエンスを吸収合併しました。これにより、統一された事業戦略のもとでより迅速な意思決定ができる体制に生まれ変わりました。事業会社ごとに分かれていた事業戦略の立案、商品企画・開発、広告宣伝の機能などを一手に担うため、新たに「マーケティング本部」を設置し、その本部長を私が兼任するようにしました。
新体制のもと、ファンケルならではの強みを生かしながら、全社一丸となって中期経営計画の達成をめざします。
──中期経営計画の2年目となる16年度は好調な業績でした。販売チャネル別の構成比はどのようになっていますか。
島田 販売チャネル別の売上高構成比は、通販45%、直営店舗30%、流通卸17%、海外9%です。ここ数年で流通卸の占める割合が大きくなりました。
この背景には13年以降、小売業に寄り添った営業スタンスを強化してきたことがあります。市場環境が急速に変化するなか、グローバル企業への躍進を遂げるためには、当社の原点である「お客さま視点」を徹底することが必要であると考え、当時名誉会長だった池森が経営に復帰しました。池森が示した方向性が一般の小売業チャネルの拡大です。さまざまな企業がサプリメント市場に進出している今、「ファンケルブランドを守るために」という名目のもとで従来のような通販と直営店舗に注力するだけでは限界があります。当社が成長するためにはDgS、CVS、総合スーパー(GMS)、食品スーパー(SM)などの小売業と連携した事業構造をつくり上げることが必要となります。
それ以降、小売業各社からの「こういう協力をして欲しい」「こんな商品が欲しい」といった要望にもきめ細かく迅速に応えるようになり、小売業向けのチャネルのさらなる開拓にも積極的に取り組んでいます。
──小売業への販売チャネルに注力したことで、具体的に何が変わりましたか。
島田 売上高がアップしたことはいうまでもありません。16年度の流通卸の売上高は、化粧品関連事業では対前期比21.6%増、栄養補助食品関連事業では同10.4%増を達成しました。これを後押ししたのが広告宣伝です。
中期経営計画では、戦略的な広告投資による売上拡大に取り組んでおり、それまで年間70億~80億円規模だった広告宣伝費用を150億円規模に増やしました。テレビCMを多く放映するようになると、それに比例して流通卸の売上が伸びる。つまり、テレビCMなどの広告宣伝は小売業にとって大きな販売支援になるのです。同時に、当社にとっては取り扱い店舗がさらに増える施策となり、相乗効果によって売上が拡大しました。
たとえば、目のサプリメントとして日本初の機能性表示食品「えんきん」は、15年6月に発売すると同時に、テレビCMなど広告を展開し、DgSでの配荷を始めました。老眼対策という話題性もあったことから大ヒットとなり、一気に取り扱い店舗が増えました。現在では、CVSなども含めると約5万店舗に配荷しています。直営店舗は約200店舗ですから、この数字を見ただけでも、テレビCMの効果の大きさは容易に想像がつきます。やはり直営店舗だけでは限界があるということです。
配荷率を高め、広告を打つことで売上を伸ばし、さらに導入店舗を増やす。こうした戦略が増収という結果に表れているのだと思います。