買収後企業を存続、成長させる シークウェル、異色の中小スーパー事業承継戦略とは?
後継者問題を解決できず、廃業の道を選ぶ中小企業は多い。そのなか「事業承継」をテーマとするビジネスを展開するのがシークウェル(東京都/柴地隆明社長)だ。跡継ぎのいない食品スーパー(SM)企業を積極的に買収、企業価値を高めた後に売却するのではなく、ともに成長するというユニークな方針のもと事業を拡大している。
ともに成長めざすスタイル

跡継ぎの不在に頭を悩ませる企業は多い。とくに事業規模の小さい中小企業ではその傾向が顕著だ。
原因のひとつは高齢化。中小企業白書によれば、1995年における経営者年齢のピークは47歳だったが、2015年では66歳と約20年の間に高年齢化が進行した。これに対し、60歳代以上の経営者の実に約半数は後継者がまだ決まっていないとの調査もある。景気の不透明感が長引き、リスクの高い世界にあえて飛び込もうとする人材も減っているのかも知れない。
「事業が継続されないと、会社に蓄積されたノウハウ、技術、生み出してきた付加価値は失われる。また雇用の場が消滅するという点でも社会的な影響は大きい。この状況の中、当社では事業承継の重要性に着目、全国の中小企業を買収し事業を引き継いでいる」。こう話すのは、シークウェル取締役の金井彰氏である。
同社の企業買収で特徴的なのは、一般的な投資回収の手法とは異なる点だ。つまり傘下に収め、企業価値を高めた後に売却するのではなく、ともに成長をめざしグループとして事業を拡大するスタイルをとる。
聞けば、社長を含む経営陣はいずれも実家が何らかの商売を手掛け、後継者問題に直面した経験を持つ。それが現在のユニークなビジネスモデルの源泉にもなっている。
さてシークウェルでは、日本各地にあるあらゆる業種の中小企業を買収の対象としている。そのなか、とくに実績があるのはSM企業だ。08年の会社設立後、小規模のS Mを3社、順次買収、今はどれも業績を伸ばし、主力分野に育っている。同社の売上高は今期、約200億円(連結)で着地する見通しで、その大半がSMによるものだ。
SMへの認識を、金井氏は次のように説明する。「景気に左右されない、非常に手堅いビジネス。繁盛店であれば1日のレジ通過人数は2000~3000人あり、毎日、来店する方も少なくない。経営環境は厳しいが、非常に魅力的だと感じている」。
これまでグループ化したSM企業に共通するのは、生鮮食品に強みを持っている点。地域から強い支持を獲得してきたものの、競争激化などを受け、収益力が落ちるといった問題を抱える企業もある。だが同社によれば、そのような企業は改善の余地は大きく、適切にてこ入れ、また活性化すれば、さらに成長できる可能性を秘めているという。
売上が買収前の2倍に伸長
シークウェルでは実際に、どのような企業を買収し、いかに成長を実現しているのだろうか。SMの第1号は、
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