躍進するファッションサブスク 先達エアークローゼットが示す“第三の消費”のポテンシャル

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定額レンタルの横展開で「利用して買う」を文化へ

 カジュアル系ウエアのファッションサブスクのパイオニアとして、市場をけん引する同社は、直近の会員数が45万人を突破。新しいアパレル消費の形として、着々と認知度を高めている。コロナ禍の2020年4月には同サービスを横展開した寝具や美容機器などを定額レンタルするエアクロモールを立ち上げ、洋服以外のサブスク型レンタルサービスを開始。エアクローゼットで積み重ねた信頼を後ろ盾にして快調に会員数を伸ばしている。

エアークローゼットの天沼社長
エアークローゼットの天沼社長

 「ようやく投資フェーズから収益フェーズ」(天沼社長)というように、これまでは基盤の整備に軸足を置きながら運営を続けてきた同社。これからは、サブスク型ファッションレンタルという新しい消費スタイルを社会に浸透させ、店舗での購入、ECでの購入、そしてお任せ・お試し購入という新しい消費スタイルの確立に本腰を入れることになる。

 ファッションサブスク市場は、海外に目を向ければアメリカのハイエンド層をターゲットにする『レント・ザ・ランウェイ(RENT THE RUNWAY)』が会員数900万人、AIによるデータ活用で定額制ファッションレンタルを運営し急成長している『ステッチフィックス』も会員数約300万人を抱え、大きな市場を形成している。それだけに天沼社長も市場ポテンシャルを踏まえた上で、当面の目標会員数として「数百万人」と口にする。

蓄積した基盤を他社へ提供も視野

 その先には、創業時から投資を続け、確立した定額制レンタルプラットフォームとしての基盤を他社に提供する支援事業や膨大に蓄積した商品使用に伴う多様なデータを活用したマーケティング支援および商品開発支援事業などによる新たな収益源創出も見据える。

 「まずはさらに会員を増やし、サービス品質を上げていき、この業態で最も信頼されるプラットフォームを目指し、定額制ファッションレンタルを文化として根付かせたい」という天沼社長。  

 活気づく市場には競合の参入も相次ぐが、同氏にとっては新たな文化を生み出すための同志という感覚でしかない。

 リアル店舗での購入、ECでの購入、そしてサブスクで借りて試しての購入。人口動態と照らせば、今後、消費が縮小することは不可避といえるが、さまざまな業態の参入で市場が拡大し、じっくり試して買う“第三の消費スタイル”が浸透することで商品購入の選択肢が増えれば、少なくとも減退傾向にある消費欲にブレーキをかけることにはつながりそうだ。

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