2025年度売上高1兆円に向け、店舗を地域の中心核にする=アークス 横山 清 社長

聞き手・構成:下田 健司
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規模やシステムのメリットをM&Aでどう生み出すか

──いわゆる個店経営については、どのように捉えていますか。

売れ筋でなくてもリピート客がいれば、その商品を揃えることが店舗の個性につながる売れ筋でなくてもリピート客がいれば、その商品を揃えることが店舗の個性につながる。アークスの新システムはそれを可能にする

横山 1店1店が個人商店のように経営すると誤解されがちですが、そうではなく個店経営というのは個性を発揮できる店舗をつくっていくことだと認識しています。

 新しく導入するシステムもそれに寄与するでしょう。これまでは規格化・標準化が高効率であるという観点から、たとえば豆腐を20種類扱うよりも5種類に絞ったほうがいいと考えてきました。けれども、1日1丁しか売れないような豆腐でも、必ずこの豆腐が欲しいというお客さまがいるとすれば、その商品があるかないかでお客さまの来店動機は変わります。このようなデータを人が管理するのはとてもできませんが、システムなら可能になります。3日に1回、このお客さまが必ず購入するということがわかれば、ちょうど購入されるタイミングに合わせて陳列する。このようなデータ管理をシステムでサポートすることで、お客さま満足度が高くなります。

──SMでは人手不足問題が深刻化しています。取り組んでいることはありますか。

強化部門である総菜では、センターの活用も推進する強化部門である総菜では、センターの活用も推進する。外国人技能実習生も今年から受け入れ始めた

横山 まずは定年を引き上げなくてはいけません。働きたいと思っている人はたくさんいます。そういう人たちが働きたいと思うような職場をつくることが必要です。ただ人手が足りないところは補うしかありません。そこで、取り組み始めたのが、生鮮センターや総菜センターでの外国人技能実習生の受け入れです。現在、ミャンマーから実習生を受け入れており、総勢88人になっています。そのほかにも、生鮮センターや総菜センターの増強があります。昨年12月に、事業会社のラルズと東光ストアが共同で使用する「ラルズ 東光生鮮流通センター」(石狩市)が完成しました。両社は競合する店舗もあるのですが、共同でできるものを増やし効率を高めていこうと考えています。

──総合商社が小売業との関係を深めています。

横山 商社が主導して話を進めれば、小売業は旗幟鮮明にして特定の商社との関係を持つことになります。小売大手2社に商社が関わっていますが、商社が主導しているわけではありません。食品卸売業にはすでに商社色がついていますが、小売業との攻防戦が始まるのはこれからです。商社の傘下に入ったり、商社への依存度を高めたりする企業が増えるのは間違いありませんが、一方で自主路線でそれらの企業を凌駕するような高い経営能力をもった企業も残っていくでしょう。

 当社も三菱商事から2人、三井物産から1人の人材を受け入れています。特定の商社の“色”がつくと、その系列の食品卸だけと取引をしなければならなくなります。これからわれわれの仲間に入ろうとしている企業にもいろいろな事情があります。旗幟を鮮明にすることによって自らの行動範囲を狭くしかねない、非常に難しい時代ですが、5年もすればこうした状況はクリアになっていくと見ています。

──売上高1兆円に向けてM&Aが重要なカギを握ります。今後どのように事業エリアを広げますか。

横山 北関東に進出するのではないかと言われていますが、全国からお話をいただいています。ただ、事業会社としてアークスにぶら下がっているだけでは意味がありません。エリアを徐々に拡大し、規模やシステムのメリットを生み出せるようにすることが必要です。

 単に値段を安くして売上を増やすという方法は通じない時代です。規模は利益を生み出す力を持っているわけですが、大手が苦境に陥った歴史を見れば、それだけでは足りないことが明らかです。たしかに規模拡大の必要性はあります。ただ、それは少なくとも、われわれの場合は東京以北においてです。すでに北海道と北東北のシェアが30%近くに達しています。そういうエリアを拡大していけば、さらに西へ行くかもしれません。

 もう1つ重要なのは信頼関係です。相互信頼こそが成功の基になります。しっかりとした関係をつくりあげることが大事になります。

──後継者についてはどのように考えていますか。

横山 これはアークスグループで最大の課題です。会長は私の4歳下、副会長は私と同い年です。後継者は、事業会社の中から登用するか、商社、卸売業、銀行などから招くかです。どちらがいいとも言えませんが、アークスは純粋持ち株会社ですから、事業会社の中から人材が出てくるのが望ましいでしょう。

 「ワイガヤ」(ワイワイガヤガヤ)という会議の手法があります。われわれもワイガヤです。電話やレポート1枚で営業報告をすることも可能でしょうが、各事業会社の経営者が一堂に会することによって各社にどういったことが起きたか、どのように対処したのか、お客さまはそれをどう見たのかということを共有する。経営会議そのものが教育機関です。3年、5年のレンジでいけば、必ず世代交代があります。そういう面では、こうした場こそが後継者の養成所だと思っています。

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