社会インフラとして卸機能の強化と生産性向上をめざす=PALTAC 木村 清隆 社長
仕組みを改善していくことは強み、財産になる
──PALTACは化粧品・日用品・OTC卸としてはダントツの規模です。
木村 当社はこの17年間、生産性向上のためRDC(大型物流センター)を全国に建設し、物流機能を強化してきました。1998年から地道に行ってきたRDCの設備投資により、現在の当社があるといっていいでしょう。北海道から九州、沖縄まで、全国に16あるRDCを標準化し、同じ仕組みを導入することで生産性アップを実現してきました。
センター1カ所で取り扱う商品が多いほどトラックの積載効率が上がり、1品当たりの配送費も下がります。小売業さまへの出荷に関しても、トラックへの積載量が50%なのか、90%なのかで当然1品当たりの配送コストが変わります。インストアシェア(取引先店舗におけるPALTACが扱う商品のシェア)が高くなれば、当然オリコン(折り畳み式コンテナ)も埋まり、積載効率が向上するため配送費が下がります。
当社の「RDC横浜」(神奈川県座間市)は出荷額1000億円以上、今年8月に稼働した「RDC関東」(埼玉県白岡市)も同800億円以上あります。関東圏で1兆1000億円といわれる化粧品・日用品・OTC卸売市場の中で、当社のシェアは24%程度ですが、今後さらに高めていきたいと考えています。
──生産性を上げるためにどのようなことを行っていますか。
木村 当社では、毎日午前11時になると、全国のRDCの翌日の作業量がすべてわかる仕組みができています。RDCへの入荷量、出荷量、それに対応するための部門別作業量などがすべて数値化されて出てくるため、何人の人員で、何時間で作業が終わるかが、前日の11時の時点でわかるということです。この人員割り当ての仕組みは独自のものであり、これを突き詰めていくことがムダをなくし、生産性を高めていくことにつながります。
会社全体のコストの9割近くは人件費と物流費です。人を減らすよりは、作業量にあわせた適切な人員配置と時間配分により、作業時間を圧縮します。人を減らしても作業が夜中までかかるようでは意味がありません。
正社員からパートタイマーさんまで、改善点について何でも話し合える風通しのよい職場であることが当社の強みです。当社の三木田國夫会長は自身のことを「支配人」だといいます。私自身も自分は現場のマネジャーだと考えています。物流、商品、営業、システムの4つの部署はすべて同等であり、そこに調整役の私がいるのです。車の車輪と同じで4つのタイヤが同じように動くからこそ、真っ直ぐ走ることができるのです。どこかの部署が負担を抱えているとき、ほかの部署がどれだけカバーできるかもセンター運営の重要な点です。小売業さまに対する営業を第一に考えながらも、各部署が抱える負担分をどれだけ圧縮できるか。こういった考え方をもとにコスト削減を行っています。
当社ではさらなる生産性向上に向けて、昨年からセンターなどでの作業手順を白紙に戻し、全員で意見を出し合いながら改善点の洗い出しを行っています。現状、出ている改善点だけで1000項目ほどありますし、今後も増えていくでしょう。これは終わりはないと考えています。
仕組みを改善していくことは当社の強みになり、財産になります。機器やITをはじめとした物流システム自体は日々進化しますが、それを使うのはあくまでも人間です。当社には創業時から「人こそが財産」という考え方があります。システムは他社が追いつくことはできても、人材の育成については一朝一夕にできることではありません。人やシステムが効率よく動くことによって利益を生み出せば、メーカーさまや小売業さまの信頼を得ることにつながります。
製配販がそれぞれ利益を確保できなければ、対等なビジネスは難しくなります。たとえば物流業者に対して値下げばかりを要求してはモチベーションも下がります。委託する配送業者さんには、当社は競合より多く支払うようにしています。ドライバーの実入りを少しでもよくすることで、気持ちよく仕事をしてもらえるよう努めています。