農地バンク活用でコメづくり、めざすは地域活性化と農業改革=イオンアグリ創造 福永庸明 社長
収量を上げつつ、生産する農作物も増やす
──「埼玉羽生農場」(埼玉県羽生市)ではコメづくりに着手しています。生産する農作物を増やしていく方向ですか。
福永 当初は葉物野菜を中心に栽培していましたが、現在では「兵庫三木里脇農場」(兵庫県三木市)でブドウ、「島根安来農場」(島根県安来市)でイチゴ、「北海道三笠農場」(北海道三笠市)でメロンをつくっています。将来的には、収量を上げつつ、生産する農作物も増やしていきたいと考えています。
「埼玉羽生農場」でのコメづくりは、農地中間管理機構(農地バンク)を活用した取り組みです。当初、作付面積は11haでしたが、周辺の農家さんから「うちの水田も使ってほしい」と申し出があり、今は18haで稲を育てています。今年の10月頃には収穫できると思います。農地バンクには引き続き手を挙げていますから、農地が集積できれば活用していきたいと考えています。
──販売の状況はいかがですか。
福永 大きなボリュームの生産物については、いまは加工用と生食用の2つにわけて栽培しています。
加工用はグループ会社の工場に出荷しています。
生食用は、イオングループの物流センター経由、または直接、イオンリテール(千葉県/岡崎双一社長)の店舗に出しています。当初、野菜の品質はあまりよくありませんでしたが、今ではほかの商品と比べて鮮度が段違いによいと評価をもらっています。
たとえば、「埼玉羽生農場」で栽培しているブロッコリーは、1日300株、近隣の「イオン羽生店」で販売されています。毎日完売で、農産部門の主任からは「もっと持ってきてください」と言われるくらいです。
また、イオンリテールやマックスバリュ各社のバイヤーが農場に直接来て、「こんな野菜をつくって欲しい」と要望されるケースが増えてきています。「北海道三笠農場」では、バイヤーの要望に応えて「黒珊瑚キュウリ」を栽培しています。
当初は私たちに技術がなく対応できませんでしたが、今ではバイヤーと詳細を話せるくらい知識も技術も身についてきました。
先ほどのブロッコリーは、朝8時に収穫して店に運びます。市場から仕入れるより鮮度がよく、自分達で育てているのでそのことをしっかりとお客さまにアピールすることができます。そして毎日、採れたての野菜が売場に並びます。これは、現状ではイオングループにしかできないことです。今後は、店舗に直接供給する商品の割合を増やしていきたいと考えています。
──コールドチェーンの仕組みはどうなっていますか?
福永 センターに持っていく場合は、収穫後すぐに保冷車(トラック)に積んで運んでいます。店舗に直接出している野菜は、保冷車ではなく通常のクルマで運んでいます。近い店舗であれば収穫してそのまま持っていってもほとんど鮮度劣化がありません。しかし複数の店舗を回るとなると、最後の店舗はどうしても時間がかかってしまうことになります。農場で保冷車を購入するというよりも、小さな冷蔵庫を軽トラックに載せるほうが低コストだったりしますので、農場で栽培している品目や店舗での販売状況を見てケースバイケースで判断していきたいと考えています。