ビジネスモデルを根本的に変える=西友兼ウォルマートジャパンCEO
40店舗を改装し30店舗を閉鎖へ
──東川口店は快適さと利便性が具現化されています。
デイカス 東川口店は、利便性や楽しさなどお客さまのさまざまなニーズに応えることができました。店舗の生産性を上げていく最初の一歩となりました。比較的低コストでリモデルした店舗ですが、まだまだ改善の余地はあります。同じリモデルであっても、もっと低コストで効率的にできることはあります。それができれば、同じ投資額でたくさんのリモデルが可能になります。ひばりが丘団地店と東川口店で、お客さまの満足度調査のスコアを見ると、他店に比べて高く、改装について評価してくださっていることは非常によかったと思っています。
──改装投資については、どのようなプロセスを経て意思決定していますか。
デイカス 不動産部と商品本部で話し合い、陳列棚の台数やカテゴリー別の売上目標値、全体の売上目標などについてすべて合意したうえで、REC(リアル・エステート・コミティ)に諮ります。改装に関するガイドラインをもとに、RECで改装の方向性を議論して承認していきます。RECには、シニアマネジメントが参加して全員の合意を得ます。
──意思決定の際の重要な指標はROI(投資収益率)ですか。
デイカス 最初に考えなくてはいけないことは、改装によっていかにお客さまに満足してもらうかということです。それをおざなりにして、財務計画だけ立ててもよい結果は生まれないでしょう。もちろん、ROIは非常に重要な指標です。ROIをはじめいくつかの指標には一定の基準値を設けて、それに基づいて改装計画を立てています。規律をもった投資を実施し、EDLCを徹底しています。
過去十数年、日本の小売市場規模は横ばいです。売場面積は増えていますから、坪効率は低下しています。これは、収益性、生産性、効率性、さらには株主へのリターンが損なわれてきたということを意味します。業界全体がこれから変わっていかざるをえないでしょう。
──今年度、改装を計画している40店舗は、ひばりが丘団地店、もしくは東川口店のかたちに変えていくのですか。
デイカス 全体としてはその方向ですが、店舗年齢や店舗の形が異なりますから、店舗の特性に合わせて、できるところから実施したいと考えています。
──一方で、約30店舗を閉鎖することを発表しました。
デイカス 閉鎖を発表した店舗のほとんどは、商圏の人口が減少しています。店舗によっては、10年以上もの間、テコ入れを図ってきましたが、再生を果たすことはできませんでした。商圏の潜在成長性がポジティブではないことから、閉鎖したほうがマイナスを止めることができると考えました。ただ、30店舗を閉鎖するとはいっても、全体の売上へのインパクトは、数%内に収まる見通しです。
──店舗閉鎖の意思決定は難しかったのではありませんか。
デイカス 小売業にとって、店舗閉鎖がなぜ難しいかというと、あきらめたくないという気持ちが強いからです。ウォルマートに限らず、ほかの小売業もそうだと思いますが、店舗閉鎖は負けを認めたということを意味するのでしょう。
たしかに、店舗閉鎖には負けを認めるという感情があるかもしれませんが、市場が変われば、われわれも変わらなければなりません。商圏人口が減少してきた店舗は、人口の増えているところに移していく必要があります。幸い、われわれのほとんどの大型店は関東にあり、人口は減少していません。店舗閉鎖は負けを意味するのではなく、ビジネスの再編成にしかすぎません。
とはいえ、店舗を閉める決定を下すのは、苦渋の決断です。そこは、規律をもって断行していかなくてはなりません。EDLP、EDLCを重視する企業にとっては、これは非常に重要です。どこかの店舗で収益があがらないからといって、そのぶんをほかの店舗の収益で補うことはできません。その店舗の収益は、必ず価格引き下げの原資にしなければいけないからです。そう考えると、全店が等しく利益を上げていく状況をつくっていかなくてはならないのです。非常に厳しい意思決定でしたが、必要なことでした。未来にどうするかを考えたときに、どこかの時点で過去を切り離さなくてはなりません。