《特別提言》経営者の努力次第で中小食品スーパーは強くなれる!=エコス 平 富郎 会長
提言(2) 自店の得意分野をつくる
企業規模が大きくなることのデメリットもある。チェーンストアは商品を大量に仕入れることで効率化の実現をめざすが、こと生鮮食品に関しては、コストアップ要因になる場合もある。
たとえば、ある大手SMが全店舗で焼肉のセールを実施するとしよう。肩やももの肉を特売するために、市場に大量の買い注文を入れると、その部位の供給が間に合わず、値段が高くなったりする。必要量が揃わなければ、価格が高いことを承知で買い集めるようになってしまう。精肉など生鮮食品は、発注数量が少ないほうが安くなることもあるというわけだ。
一方、大手SMがセールをしなかった部位が、市場で半値八掛けの値段で売られることもある。ここで規模の小さいSMは機動力を発揮し、安値で仕入れて競合店の半額で販売すれば、お客さまが集まり、利益確保につなげることができる。
要するに、企業規模が小さくてもできることはたくさんあると言いたい。規模に応じた強みを貫けばいい。SM市場は大手10社の市場占有率が約30%と、他の業態に比べてまだ低い。私の経験から言わせてもらうと、中小SMは大手が真似できない得意技で勝負すれば、生き残れるはずだ。
私は1979年にSM1号店を出店した。当時、よく築地市場に通ったものだ。セリが終わったころにセリ場に行って、売れ残っている鮮魚や干物、練り物を捨て値に近い価格で仕入れた。それを安値で販売しても十分に利益を確保できた。
ナショナルブランド(NB)メーカーから安く商品を仕入れる方法もある。NBメーカーは通常、品切れしないように商品を多めに製造するので、その余剰分をねらう。通常、NBメーカーは大手SMから1万個の商品を受注したとすると、5%分に当たる500個くらいを余分に製造する。数量は少ないが、このような余剰在庫を安値で仕入れ、低価格で販売すればお客さまが集まる。実際、こうしたNBメーカーの余剰在庫の安値販売を強みにしている中小SMはけっこう多い。
このようにいろいろな商売の方法があり、それぞれ規模に見合ったやり方を追求すればいい。やる気さえあれば1店舗しかなくても、工夫次第で十分な利益を確保することはできる。
品揃えの面では、あれもこれも揃えてしまっては、大手SMとの差別化が難しくなってしまう。これを避けるために、店舗の特徴を打ち出せる商品が必要となる。市価の半額以下で販売する商品を目玉にしてもいいし、生鮮食品や総菜など得意とするカテゴリーをつくり出せばいい。本当に強いカテゴリーがあるのなら、店舗の半分をそのカテゴリーの売場にすることもできる。逆に弱いカテゴリーは売場縮小を検討すべきで、鮮魚の品揃えに自信がなければ、冷凍食品で対応しても構わない。自店の強みを生かして、得意なカテゴリーにこだわっていれば、支持してくださるお客さまも増えるだろう。
中小SMの商品政策(MD)は大手と同じことをしないこと。そして、自店の得意なカテゴリーを前面に出し、地域一番をめざすことが鉄則といえる。