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ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営19 ポストコロナのSCがとるべき「アトラクト型マーケティング」とは

販売促進活動(略して「販促」)とは、書いて字の通り、販売を促進する活動のこと。しかし、SCなどテナント賃貸を行う商業施設では販売を行うのは入居しているテナントである。にも関わらず、なぜ、賃貸人が販促を行うのか。本当は他にやることがあるのではないか。そして、マーケティングの1つであるプロモーションをなぜ販促と矮小化して呼ぶのか。これらの疑問に答えるべく進めてきた本テーマも今回で最終回となる。

metamorworks/istock

プロモーションの対象領域、機能、役割とは

 商業施設のプロモーション活動がターゲットとする領域は、「消費者に興味を持ってもらい、来店(来場)し、お買い物をし、顧客となってもらい、また来てもらう(リピート)、そして、それらを広くシェアしてもらう」、この連続である(図表1)。

図表1

 リアルの場である商業施設のプロモーション活動は、この領域全体をマネジメントすることであり、この中に課題があればそこを解決しなければならない。

 集客が落ちれば集客施策、買上単価が落ちれば買上単価増加施策、リピート率が落ちればリピート率向上施策と現状の課題を解決するためにプロモーション活動はある。

 その方法として集客指向のPULL型と販売指向のPUSH型がそれぞれ機能する。だから「雑誌に高いお金を出して出稿したのに売上上がらないねぇ」と言うのは見当違いである。雑誌掲載は、広告宣伝であり消費者の興味と誘客を促進する施策であって売上を上げる手段で無い。

 「セールやっても人が来ないねぇ」も同じこと。セールとは販売促進であり集客施策ではない。セールを告知して初めて集客につながるのである。プロモーション活動は、その目的によって施策が大きく異なることになる(図表2)。

図表2

 ここまで書くと理解していただけたと思うが、販促とはあくまでプロモーション活動の1つに過ぎず、そのプロモーション活動とはモノを売ることだけではなく、その機能と役割と活動領域は広い。だから、その構造を知らずして販促活動など出来るはずもないのである。

 現実には、商業施設の販促担当者の多くは、「キャンペーンやイベントを企画し実施すること」に忙殺されている。

 期首に作成した販促カレンダーに基づき、新生活、母の日、夏、オータム、クリスマス、年末年始と季節や歳時に合わせて次々とキャンペーンやフェアを企画し実施する。

 これも間違いでは無い。しかし、キャンペーンとは、来店された顧客の購買動機を喚起する販売促進であって集客目的では無い。仮にそのキャンペーンの魅力で集客につながったとしたら、それはキャンペーンを告知したプル型施策が奏功したと理解すべきである。

 しかし、販促担当に任命された人達の多くは、こういったマーケティングやプロモーション理論を研修されることなく、いきなりOJTに入り残業の多い非効率な働き方になることを残念に思う。

 では、どうすればよいのだろうか。


アトラクト(惹きつける)型マーケティングに移行せよ

 これまでの販促活動は、とにかく「押し込む」を主眼に置いてきた。トレンドや流行を前面に出し、新しい情報を発信することで、消費者に時代遅れを意識させ、新たな商品を売り込み、そのための商品開発や販促活動を繰り返してきた。

 しかし、今、我々が目にする媒体は、圧倒的にスマホでありチラシでは無い。そして価値観を共有できるyoutubeでありブログである(図表3)。企業の広告費がマスコミからネットに置き換わっていることがその現実を表している。

図表3

 ところがSCの販促は相変わらず、テクノロジーの進化によって媒体費も驚くほど低廉な選択をできるにも関わらず、旧来通りのプッシュ型の施策を続けている。

 何も難しいことではない。自分の日頃の生活を考えれば普段何に接触しているのか考えるだけで答えは出るだろう。

商業施設が担うべき責任と役割

 最後の疑問「なぜ、プロモーション活動を販促と呼ぶのか」だが、これはSCなどの商業施設の運営に小売企業が深くかかわったことと売上歩合制賃料の仕組みに起因する。「売上を上げる」目的のために行う活動だから「販促」と呼んできたのだ。

 しかし、SC運営者である賃貸人はそもそも販売活動を行っていない。だから売上を上げることを目指す活動には限界がないだろうか。

 商業施設の役割と責任は、①入居するテナントの販売機会をいかに提供するか、②テナントの売上高をいかにサポートするか、③来場したお客さまに快適で楽しい時間を提供するか、そして、④お客さまに「もう一度来たい」と思っていただくか、ではないだろうか。

 販売はテナントに任せ、商業施設には、この役割と責任を果たすためのプロモーション活動を期待したい。

 

西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。