将来の成長を見据え、近鉄グループの資産を活用する!=近商ストア 堀田 正樹 社長
ネットスーパー 11月から2店でスタート
──今後の成長戦略について、何か構想を持っていますか。
堀田 SM企業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。その中で、新しい取り組みや事業を付加しながら、規模を拡大していきたいと考えています。
どのSM企業も同じ傾向はあると思いますが、既存店の売上高は年数が経つと徐々に減っていくことが多いものです。当社では、過去10年間で約15%減少しました。開店後30~40年を経過している店は、とくに減少幅が大きい傾向にあります。
これに対して、今後は既存店の改装を強化することで、売上減少の速度を抑えながら、新店を出すことにより事業全体のボリュームを拡大したいと考えています。業績回復が難しい一部の店舗については、状況を見ながら閉鎖する方針です。これにより、今後10年間で、売上高を今より1割程度伸ばしていきたい。営業利益率2%、当期純利益率1%の水準を維持します。決して派手な経営目標ではありませんが、当社としてはまずは、この最低限目標をクリアすることに力を入れたいと考えています。
──おもに出店や改装よって事業拡大を図っていく考えですね。
堀田 出店や改装が基本になるのは間違いないのですが、それだけでは成長は見込みにくいとも感じています。そこで、新たにスタートさせたのがネットスーパーです。すでに取り組んでいるSM企業は多いのですが、当社も後ればせながらネットスーパー事業に着手します。
具体的には、11月1日から、奈良県奈良市の高の原店でサービスを開始しています。ネットスーパー向けの設備を新たに設けることはせず、既存の店舗を拠点に周辺エリアに商品を配達します。対象エリアは、奈良市の一部、京都府木津川市・相楽郡精華町の一部です。11月中旬からは、奈良県広陵町の近鉄プラザ真美ヶ丘店でもサービスを開始しています。
──ネットスーパーのサービスは今後、どのように拡大していきますか。
堀田 当初はまずこの2店でスタートし、その後は10店舗まで実施店を増やす予定です。規模が小さい店の周辺エリアは、近くにある大規模店から配達し、商勢圏のすべてをカバーする計画です。
実店舗の利用者は年々、高齢化が進行しており、ネットスーパーで若い世代の顧客を取り込みたいと考えています。最終的には、店舗売上の1割近くまでボリュームを増やしていくのが目標です。ただ実際には、利益を出すのが難しい事業であることも認識しています。試行錯誤しながら、お客さまに支持されるサービスに育てていくつもりです。
近鉄の駅ナカで総菜店や青果店
──近鉄グループの一員という点から、今後の成長戦略について、どのように考えていますか。
堀田 近鉄グループという点では、われわれの事業が大きく変化する可能性もあります。現在、近鉄グループで各社が持つ資産やメリット、ノウハウを共有する計画を進めています。流通事業に関して、近鉄グループ全体での最適化をめざすほか、新規事業を創出しようと検討しています。
──具体的には、どのようなことですか。
堀田 たとえば、これまで近鉄百貨店でしか販売してこなかった商品を、SMの店頭に置くというのも1つです。実際、昨年10月から、近鉄百貨店のギフト商品について、当社の店舗でも取り扱いを始めています。今後、さらにニーズは大きくなるでしょう。百貨店にとっては、ギフトの売上が減るかも知れませんが、近鉄グループとしての販売量が増えることで、全体の最適化を図るという考え方です。
また、当社にとってみれば、百貨店以外の企業との協業も選択肢の1つになります。たとえば、グループには、近鉄不動産(大阪府/澤田悦郎社長)がありますが、そこが管理するマンションなどとの宅配サービスの取り組みも実現する可能性があります。また実際、ケーブルテレビ事業を手がける近鉄ケーブルネットワーク(奈良県/小西良往社長)と連携し、当社のCMを流してもらい、商品を販売する実験をすでにスタートさせています。
──従来の枠にとらわれない、ビジネスの広がりが期待できそうです。
堀田 新業態も検討しています。これまで、われわれはSM企業として、専門性の高い品揃えや売場づくりに取り組んできました。これからは、専門店を事業展開できないかと検討しています。
たとえば、従来、SMの一部として運営してきた部門について、総菜店や青果店として独立させるというものです。近鉄と連携すれば「駅ナカ」などの好立地に店舗を構えられる可能性があります。SMの売上高は1店当たり年間10~15億円でしたが、これからは1店あたり1億円ほどの小さな規模で収益を上げる考え方も必要ではないかと思っています。
──実現すれば、独自性のある事業になりますね。
堀田 近鉄グループならではのビジネスを生み出せるのではないかと期待しています。
ただ、課題もあります。かつて、経営不振に陥っていた頃、新卒の採用を抑制した時期がありました。その結果、現在、社員の年代構成のバランスが悪くなっています。現在は毎年、新卒を採用していますが、今後は社員教育にさらに力を入れ、次代のビジネスの担い手を育成する必要があります。その結果、新しいビジネスを1つずつ実現させ、企業としての競争力を向上させていきたいと考えています。