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楽天2020年12月期決算、EC事業とネットスーパー大幅増!来期の重点施策、物流と西友の行方

楽天(東京都/三木谷浩史会長兼社長)は2月12日、2020年12月期通期および第4四半期決算を発表した。EC、フィンテック、通信など幅広い分野のサービスを提供する楽天だが、本記事では主にEC事業・流通事業にフォーカスし、決算内容と来期重点施策についてレポートする。

連結では赤字拡大も、EC事業単体は大躍進

 2020年12月期の楽天の通期連結決算は、売上収益は1兆4555億3800万円(対前期比15.2%増)と伸長したものの、1141億9900万円の純損失となった。19年12月期(純損失318億8800万円)と比較し約3.5倍に赤字が拡大、これは通信・モバイル事業などでの積極的な先行投資を行った結果だと楽天側は説明した。

 一方、コロナ禍で需要が急拡大したEC事業は大躍進。20年通期での国内EC流通総額は初めて4兆円を突破、約4兆5000億円で対前期比19.9%増となった。さらに、第4四半期単体では20年12月期で最も高い伸び率を示し、売上収益1785億2800万円(対前年同期比35.1%増)、営業利益209億7600万円(同70.3%増)と、コロナ特需の恩恵を受けた形となった。

 また、同社の主力サービスの一つである「楽天市場」では、20年通期での新規購入者数が対前年比27.6%増。一年以上購入がなかったユーザーによる購入を示す復活購入者数が同27.1%増となるなど、EC需要の高まりが数字に現れる結果となった。また、日用品や食品のオンライン購入が定着化しつつある世相を反映し、第4四半期では1ユーザーあたりの購入額が対前年同期比15.1%増、第3四半期で購入したユーザーが第4四半期でも購入した割合を示すユーザー定着率が約78%に達した。

EC成長の重点施策はリピーターの獲得とクロスユースの促進

 日本のEC市場規模は約20兆円で、家計消費全体の約300兆円に占めるECの割合は6〜7%に留まる。しかし、欧米ではEC比率が20〜30%程度であることを考えると、「(EC市場は)まだまだ拡大する」と三木谷氏は力を込める。

 さらなるEC事業の成長に向け楽天が注力するのは、独自のポイントプログラムなどによるリピーター、ロイヤルカスタマー(好んで繰り返し利用してくれる、競合に流れない顧客)の醸成および新規顧客獲得や、クロスユースの促進などだ。クロスユースとは、同一企業が提供する複数のサービスを横断的にユーザーが利用することで、例えば楽天市場しか利用したことのない顧客に、楽天ブックスや楽天トラベル、ネットスーパーなど他のサービスも利用してもらい、需要を囲い込むものだ。「楽天エコシステム(経済圏)」を掲げる同社としては、楽天カードなどのフィンテック事業や、20年同社が強力に推し進めたモバイル事業などの伸び代にもつなげたい考えだ。

物流強化も21年の重要施策

 EC事業の拡大で欠かせないのが物流の改善だ。楽天ではこれまでも、自社物流倉庫に在庫を保有し、店舗に代わって梱包・発送などの手間を負担、365日の発送対応や翌日配達を可能にする「楽天スーパーロジスティクス(以下:RSL)」という楽天市場の出店店舗向けサービスを提供してきた。20年はコロナ禍の影響もあり、このRSLの利用店舗数が対前年比87.4%増、出荷量は同140.7%増と急伸長。来期はRSLの受入量拡大、利用促進に注力し、店舗の売上拡大と顧客の利便性向上に努める。

 また20年12月、楽天は日本郵便との物流領域における戦略的提携に向けた基本合意書の締結を発表した。日本郵便・楽天それぞれが持つ豊富な知見を持ち寄り共同物流拠点の設置や共同事業を展開する予定で、物流網を強化し配送料の変動を抑え、安定した配送を提供するための土台として新たな物流プラットフォームの構築をめざす考えだ。

西友への出資でねらうリアルとネットの融合

 楽天が西友(東京都/リオネル・デスクリー社長兼CEO)と共同運営するネットスーパー「楽天西友ネットスーパー」もコロナ需要で好調を示し、第4四半期の流通総額は対昨年同期比で39.9%増だった。ネットスーパーの需要増は今後も続くと見られており、21年には神奈川県横浜市港北区に新たに開設した物流センターを本格稼働する予定だ。この新センターでは自動化設備を導入しており、稼働実験段階では約60%の省人化に成功したという。

 また、楽天は、21年に西友株式の20%を取得予定と発表している。この出資で楽天がねらうのは、ネットとリアルの垣根を超えて購買意欲を作り出すマーケティング施策であるOMO(Online Merges with Offline)の推進だ。楽天の持つECに関する知見と、西友の持つ実店舗におけるマーケティングのノウハウを活かし、リアル店舗向けのDXソリューションを新しく構築する。将来的には西友だけにとどまらず、広く国内の小売事業者に向けたDX推進サポートにも取り組んでいく構えだ。