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増収増益のクスリのアオキHD、食品スーパー買収後の次の一手

クスリのアオキホールディングス(石川県:以下、クスリのアオキHD)は2020年12月23日、21年5月期第2四半期決算説明会を開催した。売上高は対前期比2.9%増の1507億円、営業利益は同27.9%増の84億円と増収増益だった。しかしながら売上高は計画を若干下回った。期中に食品スーパー(SM)2社を子会社化した同社の次の一手とは──。決算説明会における青木宏憲社長の発言を抄録する。

価格と販促をニュートラルに戻す

──クスリのアオキHDの2021年5月期第2四半期の売上高は対前期比2.9%増、対計画比では1.9%減となった。

青木 前期(20年5月期)は売上高3000億円に向けて、価格、販促を強化した。今期(21年5月期)に関してはその裏年ということで、価格、販促をニュートラルな位置に戻している。

 売上高が計画に届かなかったのは、ニュートラルな位置に戻すなかで、戻し方が強すぎたのがいちばん大きな要因だ。実際、粗利益率は29.6%で、計画に対して0.5ポイント(pt)高い。販促費率は3.3%を計画していたが、実績は2.7%で0.6pt低かった。粗利益率0.5pt、販促費0.6pt、合計1.1pt分の価格、販促が弱くなっている状況だ。売上高販管費率については、額としては予算内に収まっているものの、売上高が計画に達していない分、率としては若干上振れした。計画に対して人件費が上振れし、調剤が予算に対して大きく下振れしているものの、新型コロナウイルス関連の特需があった関係で営業利益、経常利益、四半期純利益は計画を達成した。

21年4月は850人を採用予定

──1年延期し、新中期経営計画を21年7月に発表する。

青木 1年余裕ができたので、今期は第三次中期経営計画の策定とその基盤づくり年と位置づけている。今期は新中計に向けて3つの準備をしているところだ。

 1つ目は新卒の前倒し採用だ。当社は新卒採用に苦しんでいて、改善を繰り返すものの一進一退。19年4月は目標500人に対して実績は383人だった。当社は成長戦略を推し進めるうえで人の採用が最も重要だと考えているが、このようなことが起きた。そこで全社挙げて採用活動の改善に取り組んだ。20年4月は目標600人に対して実績は615人となり、大きく改善した。21年4月は850人という大きな目標を掲げている。うち薬剤師は100人で当社初の3ケタ採用を見込んでいる。

 準備の2つ目はエリア区分の見直しだ。既存の北信越、関東、東海・近畿エリアに加えて、東北、関西エリアを新設した。東北エリアにおいては、19年に福島県へ進出。20年4月には宮城県と岩手県、11月には山形県に進出した。1年半で東北6県中4県に店舗網を拡大したことになる。関西エリアにおいては、14年に滋賀県、17年に京都府と奈良県に進出した。“将来に向けての布石”ということで進出したが、新中期経営計画を見据えて本格的にドミナント化を進める。関西エリアの本丸である人口880万人を抱える大阪府には21年に進出する。来期以降、当社の店舗展開エリアは23府県となり、日本の半分の人口をカバーすることになる。

決算説明を行うクスリのアオキホールディングス 青木宏憲社長

規模拡大をねらったM&Aはしない

──期中にSM企業2社を子会社化した。ねらいは何か。

青木 準備の3つ目はMD(マーチャンダイジング)の改善だ。現在、ドラッグストア(DgS)業界は同質化競争に入っていると考えている。今後、新中期経営計画の中では同質化競争から抜け出し、MDを改善することによって差別化を図っていきたい。

 現在は当社の柱であるフードと調剤のブラッシュアップに取り組んでいる。

 フードは生鮮食品強化の起爆剤として、石川県のナルックス(売上高48億円:5店舗)、京都府のフクヤ(同58億円:8店舗)のSM企業2社を子会社化した。当社はすでに450坪大型店において生鮮4品を扱っている。さらに350坪標準店においても青果・精肉を取り扱っている。しかしながらまだまだ“素人感”があり、改善の余地があるのでSMを子会社化した。子会社化したSMはすべてDgSに転換する。

 代表取締役社長になってから初のM&A(合併・買収)になったが、これまでの路線から大きく変わることはない。つまり規模拡大をねらったM&Aはしない。

 調剤は新型コロナウイルス感染拡大により、患者さまの受診抑制が響いて大きな打撃を受けている。こんな状況だが、今後を見据えると当社にとって信頼と利益の柱であることに変わりはない。新卒薬剤師の採用だけでなく中途採用も順調だ。今期は60薬局を開局する計画だったが、採用が好調なので11薬局増えて71薬局を開局する。期末の調剤併設率は50.1%になる計画だ。