売上50%アップした自販機も出現、JR東日本ウォータービジネスが本格導入する商品選択AIの実力とは
ねらうのは平準化と効率化
この問題を解決するため、JR東日本ウォータービジネスは18年からAIによる商品選択システムの実証実験を行ってきた。このシステムはオーストラリアの「ハイバリー(HIVERY)」社が提供するもので、「自販機向けの最適化パッケージとしては他に類を見ないシステムだ」(東野氏)。具体的には、気温などの気象データや過去の売上データ、ロケーションや機種などの情報をAIに学習させることで、課題のある自販機の発見やその自販機で売れそうな商品の選定、どのくらい補充するべきか等を提案してくれる。これまで一部のオペレーターに実際に使用してもらい実証実験を行ってきたが、時期によっては全体で5.27%売上が増加、自販機によっては50%以上増加するなど期待を上回る効果を示したという。
AIが活躍した具体例には次のようなものがある。これまで、冬季にはスープ系の商品を充実させるのが通例になっていたが、昨年の実験時にはそうした提案はAI側からあまり出なかったという。暖冬だったため「例年よりもスープが売れにくい」という判断によるものと思われるが、「冬はスープ」という固定観念から脱却したラインアップを作ることができたのは大きな発見だった。
また、夏季に比べて冬季はオペレーターの腕が問われやすい。飲料へのニーズが夏季に比べ減少するという背景のほか、ホット商品とコールド商品の割合をどうするか、ホット商品をいつから導入するかなど、経験や勘が影響する要素が多いのがその理由だ。ここでもAIの提案によってオペレーターの考える時間を減らし、業務の効率化に一役買った。
駅ナカで展開する同社ならではのメリットもあった。ホームごとに複数設置されている自販機を一つのグループとして考え、重複商品を減らし総合的な品揃えを充実させるということがより効率的に行えるようになった。
オペレーター全体のレベルの底上げや、判断の平準化はもちろん、オペレーターが考える時間をAIが代わることで作業効率を改善するなど、AIがもたらすメリットは大きい。