売上50%アップした自販機も出現、JR東日本ウォータービジネスが本格導入する商品選択AIの実力とは

2021/01/14 05:55
「ダイヤモンド・チェーンストア」記者 若狭靖代
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東日本旅客鉄道(東京都/深澤祐二社長:以下、JR東日本)管内で自動販売機(以下:自販機)の設置やオリジナル飲料の開発などを行っているJR東日本ウォータービジネス(東京都/竹内健治社長)は12月9日、かねてより実証実験を行っていた、自販機の売上向上と飲料補充業務の効率化を目的としたAIシステムを本格導入すると発表した。同社の自販機ビジネスの現在とその問題点、AI活用でねらう将来の展望について、同社営業本部自動販売機事業部の東野裕太氏に話を聞いた。

acure自販機と作業中のオペレーターの画像

JR東日本ウォータービジネスとは

 JR東日本ウォータービジネスは、JR東日本グループの飲料事業再編に伴い、JR東日本の連結子会社として2006年8月に設立。メーン事業はJR東日本管内に設置されている自販機を通じた販売事業で、ほかオリジナル飲料の開発・製造、ニューデイズなど駅ナカ店舗への飲料卸事業などを行っている。管理する自販機は約1万台で、うち約8500台を自社ブランドである「acure(アキュア)」の自販機が占める。コロナの影響がなかった2018年度の営業収益は約440億円で、うち7割が自販機事業によるものだった。

商品ラインアップ最適化の難しさ

 JR東日本ウォータービジネスの自販機の特徴は、一台の自販機で他の飲料メーカーの商品を含めた複数ブランドの商品を取り扱う“ブランドミックス”にある。世の中にある多くの自販機が特定のメーカーの品だけを専門に取り扱うのとは対照的で、品揃えの自由度の高さが同社自販機の特徴の一つだ。

 実際の運用は以下の通りだ。補充や賞味期限管理などの実務は外部へ委託。同社としては自社・他社製品合わせて常時120〜130アイテムを用意し、自販機のラインアップのうち7割を指定、残りの3割は実際に業務を行う委託先オペレーターの裁量に任せるという方針を取っている。地域および設置箇所特性を熟知し、「この自販機では何がどのくらい売れているのか」を実際にその目で見ているオペレーターに裁量を持たせることで、よりニーズに合致した商品を提供するねらいだ。

 しかし、長らくこの手法で売上を伸ばしてきたものの、事業が成熟するにつれて問題点が浮き彫りになってきた。それは、オペレーターの“腕”の差だ。経験豊富なオペレーターはうまくニーズを捉えられるが、経験の浅いオペレーターではそうもいかない。つまり、「その自販機を誰が担当しているか」によって、売上そのものが変わってきてしまうのだ。とくに担当変更などが発生すると、売上が大きく変動することが課題だった。

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