ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営14 賃料ビジネスからの脱却とマルチ収益化の手法
ポストコロナのテナント開発と
賃料ビジネスからマルチ収益への転換
この環境下において、これまでのテナント開発(テナントリーシング)が有効性を持ちづけることは難しい。これまでのテナント開発は、人気テナントや新規性のあるテナントを誘致するものの内装負担や商品リスクはテナントが負担し、SC側は固定賃料(最低保証賃料)でリスクを回避した。
確かにこれまではSC内の好立地(区画位置)を賃借し、売上を上げればテナントは投資を回収できた。しかし、コロナ禍はその前提を根底から覆したのだ。
結果、これまでのSCのリスクとリターンを見直す時期に来ていることを「テナントリーシング(テナント開発)業務」を一例に前回指摘したが、この状況はコロナ禍によって発生したものではない。筆者は以前から「テナント売上から収入を得る考え方は早晩行き詰まる」と指摘してきたが、この「行き詰まり」の日が単に早まっただけなのである。
ここで勘違いして欲しくないのは、SCのすべてのテナントに対してこのような対応をすべきだというわけではないということだ。テナントのコンディション、成長ビジョンなどから連携方法は無数にある。リスクを取ってチャレンジしたいテナント企業もいる。何がベストなのかはその状況に合わせることだ。
テナントリーシング業務をテナント企業からの配当や上場益を狙うビジネスへ広げることと同様のことは、他のビジネスへも応用ができる。
実際、SC内で行われる商取引は無数にあり、そこから発生する利得をSC企業はどれだけ真剣に考えたことがあるだろうか。
これまで人口が増加し経済が成長した時代は、あまり細かいことを考えるより、人気テナントとうまく付き合うことを優先した方が収入に直結し、仕事もその方が楽しかった。
しかし、今はそう簡単では無い。市場は縮小し、テナントも減少し、売上も低下すれば、今のビジネススタイルをそのまま続けられるはずもない。
その時、どうするのか。それはSC事業を行う際、発生する事象をどうやってマネタイズするか、そこに着目するしかないのだ。
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