ブランドリユース大手コメ兵、持株会社化のねらいとAI活用進める「リユーステック」とは?
持株会社化でめざす スピーディーな意思決定
――10月1日より「コメ兵ホールディングス」となり、持株会社体制へと移行しました。この狙いは。
石原 やはり意思決定のスピードアップと権限移譲です。以前から、名古屋にいる私が、世界各地で展開している事業についてベストな判断ができているのか、という点が引っかかっていました。いくら資料を詳細に眺めても、現地のスタッフでなければわからない“肌感”というものがあります。現地に権限移譲をして判断してもらいながら、最終決定だけを私がすることで、よりスピーディーな意思決定ができるようになると思います。また、現地のスタッフにとってもより主体的に事業を進められるというメリットがあります。コメ兵としても、親会社としてグループ企業のサポートをしながら、さらに自身で事業も行うよりは、親会社としての役割はコメ兵ホールディングスに、今までの事業はコメ兵に、役割を分割してそれぞれ集中した方が良いと考えています。
コメ兵が推し進める今後の展開
――今後、特に注力したい事業分野を教えてください。
石原 コメ兵HDでは、大きく分けてブランドリユース事業と、「クラフト」などのブランド名で専門店を展開しているタイヤホイール事業の2つの事業を展開しています。オークションや海外事業などまだまだ伸びしろがありますので、リユース事業には引き続き注力していきます。ただ、タイヤホイール事業についても、株会社化して以降順調に業績を伸ばしており、こちらについても力を入れていきたいと考えています。
――デジタル化の領域においては今後どのような取り組みを行っていきますか。
石原 直近で大きく投資を行っているものとして、真贋判定を行う「AI真贋」などの「リユーステック」の開発があります。これは、偽物を排除するだけでなく、査定中の待ち時間を削減し、満足度を高めるための取り組みです。現状では、熟練の鑑定士であれば自力で鑑定した方が早いのですが、AIが鑑定作業の補助をすることで、鑑定士はお客さまとのコミュニケーションに時間を割くことができます。また、AIを用いることで新人鑑定士の教育期間の短縮も見込めます。鑑定士は鑑定だけできればよいのではなく、接客や言葉遣いなどがきちんとできて初めて一人前です。そうしたソフト面の教育により力を入れ、AIに任せられる部分は任せることで、教育期間を短縮できると考えています。肝心の判定率ですが、一部のブランドでは99.9%に近い数字になってきています。AIの性能改善も引き続き行っていきます。
――最後に、コメ兵HDのビジョンについてお聞かせください。
石原 コメ兵はリユースを得意とする会社ですから、モノの寿命を長持ちさせ、価値を未来へつないで行く、つまり循環型社会を実現する使命があると考えています。ホールディングス化によって各社の良さが繋がり、循環型社会を実現するための土台が整いました。それぞれの事業会社が、それぞれのお客さまにしっかり向き合うことで、循環型社会を実現するための一助となっていきたいと考えています。