過去の成功体験にすがった「末路」 老舗スーパー「やまと」経営が失敗した理由
倒産した理由⑤ リスケから生じた信用不安を認められなかった
そして最後として第5、リスケや支払い遅延から生じた信用不安を大手問屋が認めなかったこと。その結果、納品停止を予測できなかったことである。売掛金が残っている先が潰れてしまっては、問屋は甚大な損害を受ける。家族的で親子何代にもわたる取引も、しっかり代金を払った上で初めて成り立つものである。
経営改善にあたり、私と指導にあたった専門家は資金繰りをつなぐために、銀行借入金に対する元本返済の猶予を取り付けることができたが、それだけではおぼつかなかったため、当時最大の仕入れ先だった食品問屋にも支払いの猶予(サイトの延長)を依頼して認めてもらっていた。
まことに感謝すべき対応だったが、ここから信用不安が生じ始めた。倒産時、納品を止めた酒問屋は保証金から売掛金をすべて回収し、残額は裁判所が没収した。ちなみにその食品問屋とは共に株式を持ち合う繋がりの深い間柄だった。上場会社の連携は怖い。問屋の考え方も時間の経過や担当者の交代により変化する。そしてどうあれ、このことは人に伝わる結果となる。
信用調査会社が頻繁に訪れ、私の気持ちも萎えていく。社員に動揺が広がり、他の取引業者からも私以外の幹部社員に問い合わせがくる。直接社長には聞きづらいことでもある。
会社の数字を把握していた私は、改革途中のよくある話だと承知していたが、他の取引先から新たな保証金の追加や仕入れ金額の制限、取引の終了などの申し入れが続いた。 そして予期せぬ納品停止を迎えることになる。
商品がなければ、それを売って翌日支払う「自転車操業」さえできなくなる。「周りからの情報が入らない、問屋の身にもなれない、会社の危機を予測できない社長の店は納品が止められても当然だ!」その日の売上で翌日の支払いをやり繰りするような会社が、お世話になっている問屋に対して逆恨みするなど言語道断、潰れて然り!
以上、ご理解いただけただろうか?いずれも、ビジネス書にもしっかり書いてある「ヒト・モノ・カネ」すべての分野で危機管理能力が欠如している。こうしてみると「典型的なバカ社長」とご批判を受けるのもよくわかる。
甘やかされて育った跡取り社長は、拙速に変化と結果ばかりを求め、一度失ったら取り戻すことのできない信用や実績をいとも簡単に換金してしまう。前著で「ちゃんと潰れた理由を書け!」とお叱りを受けたが、自分なりに力不足は痛感している。