低所得者向けの決済サービスにチャンスあり? コロナ禍の米小売で深刻化する「硬貨不足問題」
コロナ禍の真っ只中にある米流通業界で、新たな問題が浮上してきた。それが「硬貨不足」問題だ。一部の小売業が顧客に対して釣り銭の発生しない支払いを要請するなど、足元では深刻な状況が続いている。コロナ禍に端を発する硬貨不足問題は、米小売のキャッシュレス化を加速させるか――。
取材協力:高島勝秀(三井物産戦略研究所)
増産計画が発表されるも、状況は深刻化
新型コロナウイルスが猛威を振るう米国において、硬貨不足の問題が発生し、一部の小売店舗で硬貨の釣り銭を渡すことを停止する事態にまで至っている。要因としては、新型コロナウイルス問題が顕在化した3月から5月にかけて、経済活動が部分的に閉鎖され硬貨の流通が滞ったこと、米造幣局による硬貨の鋳造が停止されたことなどが挙げられる。
こうした状況を受け、造幣局は6月からは計画量の2割増とし、その後、年内は3割増とすることを発表。通貨供給量の調整を担う連邦準備銀行(連銀)は6月11日、「Strategic Allocation of Coin Inventories」という通達を出し、同月15日より硬貨の供給を配給制とすることを発表した。
こうした対策が打ち出されたものの、足下の硬貨不足が収まる兆しは見えず、状況はより深刻なものとなりつつある。その要因について、三井物産戦略研究所の高島勝秀氏は「連銀の通達を受けて多くの事業者が硬貨の確保に走り過剰に溜め込んだ可能性がある」と指摘する。
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