セブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長:以下、セブン-イレブン)が岐路を迎えている。24時間営業をめぐる加盟店との軋轢、7Pay(セブンペイ)の不正アクセス、おでんの無断発注問題と、“コンビニ王者”として君臨し続けてきた同社だが、最近は綻びが目立っている。セブン-イレブンの社風といえば、妥協を許さない「絶対の追求」。だが、最近はそれが成長の足かせになっているのではないだろうか。
店舗数は10年で8000近く増殖
この10年間のセブン-イレブンの出店スピードは目を見張るものがある。国内店舗数は2020年1月末時点で2万964店。10年前の2009年は1万2753店であり、わずか10年で8000店近く増えたことになる。
1974年に1号店を開設してから1万店に到達するまでが約30年。1万店から2万店到達までには、約14年しかかかっていない。つい最近まで年間1000~1500店のペースで出店攻勢をかけてきたこともあって、短期間で店舗数が増加している。
「セブン-イレブンは店を出し過ぎだ」と、ライバルのチェーンも舌を巻く。だが、「この猛烈な出店スピードに社内体制が追い付いていかなかったのではないか」(同)と指摘する声は少なくない。
問題が続出するワケ
セブン&アイ・ホールディングス(東京都)の井阪隆一社長は、この大量出店の結果として、“24時間営業問題”が発生した際、「現場の情報が上がりにくくなった」と述べている。この言葉にセブン-イレブンの置かれている状況が集約されている。
「圧倒的差別化」をスローガンに、セブン-イレブン本部は商品開発に心血を注いでいきた。よい商品を 開発すれば、ライバルを引き離せると考えていたのは確かだろう。出店にしても、ライバルを圧倒するような店舗網を築けば、そのスケールメリットを享受できるとみていたと思われる。
しかし反面、その過程において運命共同体であるはずの「本部と加盟店の関係が次第に希薄化し、意思の疎通が悪くなっていったのでは」(ある食品卸関係者)という声もある。
今年発生した、おでんの無断発注問題もこの意思疎通の問題に起因しているのではないかと言われている。加盟店の経営指導にあたるOFCが、オーナーに無断で商品を発注していた問題だ。コンビニの場合、発注の権限は加盟店オーナーが持っている。しかしOFCは担当する加盟店の売上アップに必死である。現場の声を十分に聞き取っていなかったとみられても仕方がない。
家電量販店と家電メーカーの関係性に類似?
ライバルのコンビニ幹部は「セブン-イレブンはかねて、何でも“徹底”する社風。それが仇になった」と話すが、出店攻勢の傍ら、圧倒的差別を追求するあまり、セブン-イレブンは事業の要でもある加盟店の顔が見えなくなっていたのではないだろうか。
「既存店売上高が下がっていれば、それはカニバリゼーションが起きているといえるだろうが、既存店は成長し続けている」。セブン&アイ井阪社長がセブン-イレブンの社長時代に、あるインタビューで語った言葉だ。
この既存店売上高アップが、同社の成長の拠り所となっていたきらいはある。既存店売上高を前年、あるいは前月実績をクリアすることが目的化し、加盟店の実情が見えにくくなっていたという側面があったと見られる。
筆者の目には、現在のセブン-イレブンと加盟店の関係性は、家電メーカーと家電量販店の構図と重なる。ある家電メーカーを取材した際、開発担当の役員が「よい製品を作ればお客は付いてくるんですよ」という話をしていたのを聞いたことがある。
その一方で、ある家電量販店の首脳は「消費者が視野に入っていない。だから日本の家電は韓国や中国に抜かれた」と発言している。つまり、セブン-イレブンも「よい商品さえつくればお客はついてくる」という誤謬に陥り、現場の最前線にいる加盟店の声が聞こえづらくなっているのではないだろうか。