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月間利用者4000万人! 11期連続増収増益を果たしたコミックシーモアの「書店づくり」とは

2025/04/07 05:35
笹間聖子
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コロナ禍に大きく伸びた電子書籍市場は、スピードを緩めつつも、堅調な成長を続けている。インプレスがまとめた新産業調査レポート「電子書籍ビジネス調査報告書2024」によると、23年度の電子書籍市場規模は6449億円で、24年度は316億円増の6765億円と、5%弱の成長が見込まれている。当然競争は激しく、なかでも「ピッコマ」「LINEマンガ」など韓国系サービスの登場で争いが激化しているのが電子コミックだ。そうしたなか24年9月、「コミックシーモア」を運営するNTTソルマーレ(大阪府/朝日利彰社長)は、電子書籍事業の決算を初めて公表。24年3月期の売上高は812億円で、11期連続の増収増益を達成したという。一体どのように差別化し、集客につなげているのか。同社取締役 電子書籍事業部長の炭田真也氏に、成長の要因を聞いた。

「WEBメディア」に常駐する「書店員」の存在

コミックシーモア特集ページ
書店員がおすすめをピックアップして紹介する特集ページ

 SNSを開けば電子コミックの広告が目に入る現代、数多くの漫画を用意しているだけではユーザーは集まらない。事業責任者の炭田氏は、コミックシーモアの一番の強みは「ユーザー一人ひとりに合わせて作品を届けている」点だと説明する。

 例えばコミックシーモアには、「WEBメディア」ながら、さまざまなジャンルの漫画に精通する「書店員」がいる。彼らの仕事は、趣向ごとに分類したユーザーに推薦する作品をメール配信したり、おすすめ作品をSNS発信したり、サイト内で特集を組んで「この作品のこういったところが魅力だ」と訴求すること。これを毎月数十本単位で行うことで、ユーザーの好評と信頼を得ているのだ。無論、他社でも行っている「過去の購入作品に似た作品が自動表示される」機能もあるが、熱量を伴った書店員の推薦による購入率は、それとは比べものにならないそうだ。

 加えて、「電子コミック大賞」というコンテストも主催している。コンテストで受賞した作品を一部無料で読めるようにしたり、ユーザー自身が投票して「ネクストブレイク」を生み出す当事者になれる機会も用意。さまざまな切り口で、「ユーザーと作品との出会いの場」を演出している。

 さらには、月間4000万人が訪れるユーザーの購入データを可視化し、トレンドを捉えた広告プロモーションも行っている。「ヒットの兆しが見えた作品をいち早く拡散することで、シーモアは常に魅力ある作品を発信していると感じてもらえている」と炭田氏。スピード感という意味では、他社でも取り扱う新作を少しでも先行して配信できるよう、出版社にアプローチしている。

 また、「作品との出会いの場の創出」という意味では、オリジナル作品も作っている。社内に十数名の編集者を抱え、約500名の作家と執筆契約を締結。データから把握したトレンドを作品作りに生かしている。24年度においては、異世界ファンタジーの流行をアレンジした「和風異世界作品」が大ヒットを記録。悪人をやっつける「復讐系」ジャンルも他社に先駆けて生み出し、話題を集めたという。

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