総合スーパー(GMS)にとって、衣料品はかつて収益の柱だった。食品購入のついでに、実用衣料や日用品をお客に購入してもらうというワンストップショッピングのスタイルが出来上がっていたからだ。しかし、そのようなスタイルが早々に崩れたにもかかわらず、大手スーパー各社は従来型のチェーンストアの売り方から抜け切れなかった。GMSは今後、衣料品を従来のように収益商品に変えられるのだろうか――。
止まらない衣料品販売額の減少
日本チェーンストア協会によると、2019年1~12月における全国のチェーンストアの衣料品販売額は、対前年比7.1%減の約8797億円だった。06年の年間販売額は1兆8088億円。約13年でざっと半減以上、1兆円近く減少していることになる。この減少傾向は現在も歯止めがかかっていない。
巷間言われている原因が、「ユニクロ」、「しまむら」といったカジュアル衣料チェーンの台頭である。そして最近ではEC事業者にシェアを奪われているのも、GMSの衣料品不振を加速させていると見られる。
「ユニクロのような業態はわれわれがやってしかるべき仕事だった」
ダイエー創業者である故・中内㓛の発言だ。目に見えるかたちでユニクロが成長していくのを、GMS各社も手をこまねいて見ていたわけではない。
PBの立ち上げや売場改革を実施
セブン&アイ・ホールディングス(東京都)傘下のイトーヨーカ堂(東京都)は幾度となく、衣料品改革に着手してきた。ただ、その成果は依然として顕在化せず、、現在では自営面積の縮小に動いている状態だ。
イトーヨーカ堂の19年2月期の衣料品売上高は対前期比5.5%減の約1536億円。10年2月期は2400億円であり、この約9年間で約36%の減少している。
イトーヨーカ堂はかつて、衣料品改革の名のもと、11年9月に「good day(グッディ)」をはじめとした衣料品のプライベート(PB)を複数開発し、衣料品売場の魅力を高めようとした。とくにこのグッディは企画、製造から販売を一貫して手掛けるSPA(製造小売業)の手法を導入した鳴り物入りのPBだったが、売上は振るわなかった。
また、伊勢丹(現在、三越伊勢丹ホールディングス)出身のカリスマバイヤーである故・藤巻幸夫氏を衣料事業部長として招聘し、衣料品売場の改革を図ったこともあったが、これも軌道に乗らなかった。
衣料品売場の活性化がカギ
イオン(千葉県)もまた、新会社を設立してSPA型のPB「トップバリュコレクション」を立ち上げ、これを230~660㎡ほどの比較的大規模な売場で展開することで、衣料品売場の活性化を試みたという経緯がある。。最近では「iC(アイシー)」というインナーカジュアル衣料ブランドを立ち上げるなど試行錯誤が続いている。
イト―ヨーカ堂は衣料品を含めた住居余暇売場を「ライフスタイル売場」として展開。22年度までに、直営売場を半分に減らす施策を実行中だ。
いわばGMS全体の不振は、主力の衣料品が、活性化されていないことが主因といっても過言ではない。
ある経営コンサルタントは「GMSの衣料品不振は、かつてのチェーンストアの運営方法を捨て切れていないことが最大の原因である」と指摘する。。
大量仕入れ・製造した商品を、品出し・補充というオペレーションの負担を強きながら大量に並べたものの、たものの、販売不振のため在庫を大量に抱え、シーズン後半には値引きで処分する。そしてその結果収益につながらないという旧態の枠組みから脱しきれていないため、GMSはいつまでも衣料品不振から抜け出せないでいるというのだ。。
「デジタルを生かしたEC化や、在庫管理の仕方、売り方を含めたすべてを改める必要がある。店頭起点で在庫を持つやり方を見直さなければならないが、ほとんど手付かずだ」(前出の経営コンサルタント)。はたして、GMSの衣料品は巻き返しを図ることができるか。衣料品がGMSの命運を握っているといっても過言ではない。