潮目の英・老舗デパート「ジョン・ルイス」がイノベーションアワード最高賞 を獲った理由
従業員の価値向上は「顧客体験」を変える
2019年に実を結んだ「環境保護」「ロボティクス活用」に加えて、2020年以降は「販売員の価値向上・購買体験の変革」という小売本業の取り組みにも本腰を入れる。
2019年11月、ジョン・ルイス(John Lewis)のサウサンプトン店で新たな取り組みが始まった。フロアごとにその中心に「顧客体験ブース(experience playgrounds)」を設置し、専門の販売員がスタイリングや化粧のアドバイスをしたり、庭の手入れの仕方をレクチャーしたりする。家電フロアでは、最新家電の使い方を学べるブースを設けた。Waitroseと共同で焼き菓子のクッキングクラスやホリデーシーズンのテーブルアレンジを学べるワークショップも開催している。この大半が無料だが、有料のブースが事前予約で埋まることも多いという。
取り組みのコンセプトは「Stay and Play」、訳をすれば「滞留と体験」と表現されるだろうか。
オンラインでの買い物が主流になる中、ジョン・ルイス(John Lewis)の店舗の従業員は「販売員」から「顧客体験をサポートする専門家」として変革を求められている。すべては、顧客が商品を手にするまでのナビゲートをすることでオンラインにない価値を届けることが狙いだ。
これは、漫然としたネットショッピングに飽きてきた消費者の目には、面白い取り組みとして映る。
ジョン・ルイス(John Lewis)のCEOであるCharlie Mayfield氏は、2019年の経営状況について、「新しいITシステムの導入および、従業員への基本給の増額に起因している」とし、「残念なことではあるが、驚きではない」とし計画的な戦略の結果であると述べている。
パートナーシップという強みを生かしながら、店舗のあり方、テクノロジー活用の検討、そして従業員・販売員の価値を考え続けるジョン・ルイス(John Lewis)グループが今回、リテール イノベーションアワードの最高賞の受賞したことは、小売をはじめ他業種にも大きな意味を持つだろう。