市場縮小でも将来性あり!ダイドードリンコが自動販売機にこだわる理由

2024/08/22 05:57
堀尾大悟
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「ソリューション」としての自販機の可能性

女性ヘルスケア応援自販機
女性ヘルスケア応援自動販売機

 オペレーション、商品開発と並んで、ダイドードリンコの自販機ビジネスモデルにおける重要戦略は、自販機の出店戦略だ。

 従来の自販機営業といえば、飛び込み営業をして、まずは自販機を設置してもらうスタイルが主流だった。しかし、マクロトレンドで自販機の設置台数が減少傾向にある中、求められるのは「数」より「質」。設置者であるオフィスや商業施設などとの関係を構築し、長く自販機を利用してもらい、LTV(顧客生涯価値)を高める方向へと営業戦略をシフトさせている。

「お客さまが望んでいない場所に無理に設置しても結局利用してもらえない。お客さまの課題や悩みに耳を傾け、最適なソリューションを提供することが営業担当者にも求められている」(中島氏)

 2012年より社内人材育成制度「ダイドー塾」を開催し、社員の営業力を高める取り組みを進める。また、2024年2月には自販機の営業担当者を100人規模で女性中心に積極採用する方針を打ち出し、「20~40代の男性が中心」が定説とされる自販機ビジネスに、女性の視点を積極的に入れるようにしている。

 その女性の視点によるユニークなアイデアは、次々と形になっている。2019年より、全国の道の駅や公共施設を中心にベビー用紙おむつを購入できる自販機を展開。また、2023年10月には女性用衛生用品を購入できる「女性ヘルスケア応援自動販売機」の提供を開始した。こういったアイデアは、飲料にとどまらない、社会課題を解決するソリューションとしての自販機の可能性を広げている。

「コンビニが約6万店に対し、自販機は約200万台。メッシュが圧倒的に細かいので、今後は限界集落など過疎地に対して生活物資を提供するインフラとして、自販機が見直される時代が必ず来る。その未来のために、自販機ネットワークはたゆまずつくり続けていきたい」

 中島氏は言葉に力を込める。

 アサヒ飲料との「ダイナミックベンディングネットワーク」の設立・子会社化によって、自販機運営では業界2位のサントリーにほぼ肩を並べる規模になったダイドードリンコ。社会環境やトレンドの変化をとらえ、“古くて新しい”リテールチャネルとして、これからも自販機の新しい価値を提案してくれることだろう。

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