市場縮小でも将来性あり!ダイドードリンコが自動販売機にこだわる理由
「オペレーション改革」で担当者1人当たり売上高が30%超アップ
マクロトレンドを見る限り、自販機は「一世代前のビジネスモデル」のようにも映る。それでも、ダイドードリンコが今なお自販機にビジネスの軸足を置いているのはなぜか。
その意図を、中島氏は次のように語る。
「手売り(コンビニなど小売店への卸売り)では、店頭への商品の陳列や価格設定において、自社でコントロールするには限界がある。できる限り私たちが強みとしている自販機網の中で商品展開していきたいと考えている」
ダイドードリンコのビジネスモデルの特徴は、製造と物流を外部の協力企業に委託する「ファブレス経営」を採用している点にある。そのため、自社の経営資源を商品開発と主力販路である自販機の開発・オペレーションに集中投下することができる。
そのビジネスモデルを、ベンダーグループ各社、そしてダイドー共栄会(自販機の特約オペレーター)とのパートナーシップによる自販機ネットワークが支えている。そのため、商品展開や価格設定などをすべて自社でコントロールできるのが同社の強みだ。
前述した価格改定の動きも、小売店に卸した場合は各小売店の事情で遅行的に反映されるところ、ダイドードリンコでは自販機を販売チャネルの中心としていたことからすばやく反映させることができた。それが、2023年度決算における増収増益にいち早く貢献した要因といえるだろう。
さらに近年ダイドードリンコが力を入れてきたのが、自販機のIoT化による「スマートオペレーション体制」の確立だ。
従来のオペレーションでは、これまでの販売実績から需要を予測し、ルート担当者が1日のルート計画を立て、必要な数量を概算でトラックに積み込み、自販機に充填していた。ルート担当者の「経験」に依存する余地が大きく、余った飲料を持ち帰るなどの非効率が生じていた。
スマートオペレーションでは、自販機をIoT化することで自販機からリアルタイムで売上状況を取得。その売上状況をもとに訪問ルートや補充する飲料の数量を最適化し、効率化を実現した。
「数年をかけてPoC(概念実証)を繰り返しながら、スマートオペレーションへの移行を段階的に進めてきた」と中島氏は振り返る。当初は現場のベンダーの抵抗も少なくなかったようだが、結果としてルート担当者の業務効率化にもつながり、担当者1人当たりの売上高は2021年比で30%超もアップした(2023年度実績)。